地域の強みで人口増<2019・05・27>

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最終更新日: 2019年5月27日

 

 長野県は市町村数が77と全国で2番目に多く、村の数は35と全国1位だ。小さな町村がどのように自立を続けていくか。これを知るため、数か月に一度、県内の町村長を訪ねては話を伺っている。

 先月は人口1,700人程の東筑摩郡生坂村の藤澤泰彦村長を訪ねた。生坂村は巨峰の生産で知られるが、主な担い手は県外から移住した新規就農者達だ。元大手メーカーの技術者や自衛隊のOBなど異分野から参入したブドウ栽培農家は20軒に上り、家族を含めた人数では50余名となる。彼らの影響もあり、2015年の国勢調査結果では社会増が長野県トップ、全国でも20位にランクしている。

 何故、この村の農業にはこれ程の人材が集まってくるのだろうか。
生坂村は、村内での買い物にも事欠くへんぴな中山間地にある。平成の大合併でも、近隣町村との合併が叶わなかったような厳しい環境にある。何もしなければ、若者は村外に流出したままで、新しく移住する人もいない。

 このような村だからこそ危機感を抱き、効果のでる人口増対策を講じてきた。村の自立のためには、産業の活性化がいの一番に必要となる。巨峰生産に優位性を持つ村では、これを更に強くすることを考えた。それが高齢化した担い手に代わる、新たな担い手の確保だ。村では「新規就農研修制度」を1998年に導入し、全国から就農希望者を募った。制度では、新規就農者に対する村営住宅等の提供、3年間の研修中の月額15万円の生活費支給、卒業後のブドウ園や収穫できる状態のブドウの斡旋など、正にフルセットでの農家育成プログラムを用意した。こうした取り組みに加え、よそ者に対して壁を作らない村の気運が多くの移住者を集めた。

 長野県内には、山以外何もないといった中山間へき地の自治体が多い。しかし、ないからダメではなく、ないからこそ多彩な知恵を出してきた。これからも、ないものねだりでなく、あるもの探しができる地域が元気になっていくのだと思う。

 

(参考)読売新聞「しなの草子」『新規就農者村が育成』(2019.05.25)を元に加筆修正

 

  

 

 

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