製造業の景況感が急激に悪化<2019・5・17>

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最終更新日: 2019年5月17日

製造業の景況感は9期ぶりのマイナス水準に

    2019年4月に当研究所が行った業況アンケート調査によれば、企業の景況感を示した2019年1~3月期の業況判断DI(業況が「良い」と回答した企業割合から「悪い」と回答した企業割合の差)は、全産業が△9.5と2期ぶりに悪化し、8期ぶりのマイナス水準になりました。
   業種別では、製造業が△17.7と前回(10-12月期)調査の見通し(△0.6)を大幅に下回り、前期に比べ32.5ポイント悪化しました。これはリーマン・ショック時(同24.2ポイント)を上回る急激な落ち込みで、マイナス水準は9期ぶりです。米中貿易摩擦に伴う受注減少や在庫調整などから電気機械を中心に景況感が急激に悪化しました。
   一方、非製造業は、前回調査では△17.4へ悪化する見通しでしたが、実績は△1.8にとどまり、水面下ながら2期連続で改善しました。増勢を維持する国内の設備投資を背景に、機械器具卸や民間工事のほか貨物などの受注が堅調で、景況感が改善しました。
   19年4~6月期は、全産業が△14.0と1~3月期に比べ4.5ポイントの低下見通しとなっています。このうち製造業は△17.1と同+0.6ポイントでほぼ横ばい、一方、非製造業は△11.2と同9.4ポイント低下する見通しです。製造業の国内需要は、自動車関連の設備投資を中心に底堅いとみられますが、海外は米中貿易摩擦の影響などによる需要の減少が引き続き懸念されます。非製造業は、4月以降の原材料価格上昇の影響などから、食料品などの景況感はやや悪化しますが、春の行楽シーズン到来や改元による消費増加が期待されるほか、住宅建設は、消費税増税前後の需要変動を平準化させる政府の施策などもあり、底堅く推移するとみられます。

米中貿易問題の深刻化は、設備投資を減速させる懸念も

   今回、上記調査に併せて「米中貿易摩擦の影響に関するアンケート調査」を行いました。
まず、米中貿易摩擦の県内企業への影響について尋ねると、「既に影響が出ている」という回答が全産業で26.5%、「影響は出ていないが、今後3カ月以内には出る見込み」が4.9%、「影響は出ていないが、今後6カ月以内には出る見込み」が15.5%となりました。産業別にみると、製造業で「既に影響が出ている」という回答が42.1%と高くなっており、今回の景況感悪化の要因となっています。
 また、 米中貿易摩擦の影響が既に出ている企業と今後出る見込みの企業に、対応策の有無を尋ねたところ、対応策が「ある」と回答した企業は全産業で24.2%となりました。対応策のある企業は一部にとどまっており、対応の難しさがうかがえます。
 貿易摩擦の影響が広がる中、自社の設備投資計画への織り込み状況については、貿易摩擦の影響を設備投資計画へ「織り込んでいる」という割合は全産業で12.5%にとどまりました。一方、今後、貿易摩擦の影響がさらに拡大した場合の投資計画の見直しについて尋ねると、「今後、影響が拡大すれば検討する予定」が31.7%となりました。そのうち製造業は42.9%とさらに高くなっています。米中貿易摩擦の深刻化は、設備投資を減速させる懸念がありそうです。
 今後、製造業で米中の貿易問題などによる受注減少がさらに拡大していくのか、引き続き海外経済の動向を注視していく必要があります

 

(初出:2019年5月15日付 南信州新聞「八十二経済指標」)

 

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