今年の経済の振り返りと新年の展望 ~2019年は、景気回復の勢いが弱まる見通し~

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最終更新日: 2018年11月20日

2019年は前年に比べ回復のテンポは緩やかに

    2018年の日本経済を振り返ると、世界経済の拡大に伴う輸出や設備投資の増加を受け、景気は緩やかに回復しました。ただ直近の7-9月期の実質GDP(季節調整値)は、前期比△0.6%(年率換算△2.5%)と2四半期ぶりのマイナス成長となりました。地震や台風、豪雨などの自然災害の発生が成長率を押し下げた要因と考えられ、10-12月は再びプラス成長に戻ることが予想されます。
   現在の景気拡大局面は、12年12月以降続いており、戦後2番目に長かった「いざなぎ景気(57カ月)」を超えています。また景気回復が来年1月まで続いた場合、回復期間は6年2か月となり、02年2月から08年2月まで続いた景気回復期(いざなみ景気)を超え、戦後最長を更新することになります。
   2019年の日本経済を展望すると、世界経済の減速やオリンピック関連投資の一巡、消費税増税などから成長率は鈍化するものの、景気の緩やかな回復が続くことが予想されます。このうち消費増税による駆け込み需要とその反動減については、14年の消費増税時に比べ引き上げ幅が小さいことや軽減税率やポイント還元など複数の対策が講じられているため、前回よりも影響は小さいとみられます。
   一方、景気のリスク要因については、海外を中心にいくつかの不透明要素が挙げられます。特に米中の貿易摩擦の影響が海外経済の減速感を強めるリスクや中東情勢、米国の金利上昇による国際金融市場の動揺、英国のEU離脱などが挙げられます。

長野県もけん引役の製造業の回復勢いは弱まる見通し

   県内の2018年は全国同様、全体としては緩やかな回復が続いた1年でした。海外の景気回復や為替の円安の流れを受け、製造業では好調だった前年の受注水準を維持する企業が多くみられました。ただ秋以降からは中国経済の減速や米中貿易摩擦の影響に伴い受注水準が低下する企業も見え始めました。一方、非製造業は、観光面では天候不順の影響により集客効果が限定的だったものの、製造業を中心とした設備投資の増加に伴い、民間工事や機械器具卸、貨物など受注は底堅く推移しました。
   2019年の長野県経済を展望すると、回復の勢いは弱まる見通しです。県内の需要は、人手不足などへの対応などから省力化を目的とした設備投資が底堅く推移するとみられます。ただ米中貿易摩擦の影響が長期化する可能性が高く、製造業にも受注減少などの影響が生ずることが懸念されます。消費面については、消費増税の影響は前回に比べ小さいとみられますが、物価上昇による負担感は残り、消費者のマインドの改善にはつながらないと思われます。公共工事は、大型工事も少なく、水準としては前年を下回る見通しです。住宅投資は、消費税増税に向けた増加が予想され、着工戸数は前年度を上回る見通しです。 

次世代を見据えた基盤づくりの年に

    来年、長野県は航空機産業の育成を成長戦略の柱の一つに据え、県内の航空関連企業の海外市場開拓の支援を本格化する見通しです。南信地域には政府が進める「アジアNo.1航空宇宙産業クラスター形成特区」に数多くの企業が参加しています。また飯田市の産業振興拠点「S―BIRD」には国内唯一の航空機産業向け試験機が揃う予定であり、その動向が注目されます。
   このほか検討が進むリニア中央新幹線県内駅の周辺整備の基本設計がまとめられる見通しです。2027年の開通を見据えた駅周辺のイメージを目にする機会も増えそうです。来年は次世代を見据えた芽が見え始める、その成長を促すための基盤づくりとしての重要な年になりそうです

 

(初出:2018年12月28日付 南信州新聞「八十二経済指標」)

 

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