人手不足時代の経営を考える<2018・12・17>

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最終更新日: 2018年12月17日

現在、緩やかな回復を続ける景気、12月で戦後最長と並ぶ

   最近の経済情勢を見ると、2012年12月から始まった景気は、生産や設備投資の増加により、回復基調を維持しています。今月(2018年12月)が過ぎ、引き続き回復が確認できれば、戦後最長景気と並びます。
  多くのシンクタンクの見通しによると、米中貿易摩擦の悪化などによる景気後退がなければ、景気は東京オリンピックが開催される2020年当たりまでは続く見通しとなっています。
  しかし、その後の中長期的に見た場合には厳しいものがあります。そこには、人口減少が経済の足を引っ張り、徐々に成長率を落としていく姿が予想されています。

急減する労働力人口、企業に求められる労働環境の改善

 長野県の労働力人口の予測を見ると、2015年の119万人が2030年には101万人と、15年間で18万人の労働力が減少していきます。この数値は、上田市の人口が約15万人ですから、15年で上田市の人口を上回る労働人口が減少することとなります。
  また、既に現状においても各企業の人手不足は深刻です。長野経済研究所の調査では「人手が不足しており、仕事が受けられない」などと回答している企業は、57%と約6割に上っています。
  これに対して、企業はどのような対処を考えているのでしょうか。同アンケートの回答によると、最も多い対応が「業務の効率性を高める」です。2人で1つの仕事をやっていたのなら1人でやるなどの効率化や、人に頼っていた仕事を自動化する省力化投資等の対応です。
  2番目に多い対応が「賃金の引き上げを含む、労働環境の改善」です。人手不足の中、賃金が業界平均より低かったり、残業続きのようでは、離職が増えますし、採用もできません。ましてや既述の「業務の効率性を高める」人材など、育つ訳がありません。
  3番目が「採用対象の拡大」です。元気な男性社員ばかりでなく、子育て中の女性や退職後のシニア、外国人など多様な人材の手を借りなくては仕事にならないほどの人手不足、ということが分ります。これも2番目の「労働環境」が良くならないと成しえません。残業続きでは、育児中の女性やシニアは働けないでしょう。

社員の前向きな行動を促す取り組みが重要、その取り組みとは?

 そこで、これからの厳しい時代に備えるには、従業員が辞めずに戦力化し、新たな人が採用できる良い会社になっていくことが大切です。幾らでも人が採用できた時代とは、異なる取り組みが必要になっているということです。
  それは、この会社で生活ができるという安心感に加え、社員の前向きな行動を促す取り組みです。
  長野経済研究所では、長野県内企業の「社員の前向きな行動を促す」取り組みとその成果を把握するため、県内企業2,000を対象にアンケート調査を実施し、560社からの回答を得ました。
  本調査では、近年5年間の売上・経常利益がそれぞれ20%以上増えているという「好収益企業」は、同時期に売上減・経常利益減の「低収益企業」に比べ、「社員の前向きな行動を促す」取り組みをする企業割合がより多いという関係性を明らかにしています。
  具体的には、「経営理念浸透の工夫。経営層が人材育成や組織風土改善に熱心。正社員比率が高い。柔軟で多様な働き方ができる。公平公正な人事評価と処遇がなされている。自社独自の福利厚生制度がある。改善・改革の社内風土がある」などです。
  これらの取り組みが相俟って、社員に安心感を持たせ、前向きな行動を促し、業績につなげたものと推察できます。
  もちろんこれらの取り組みを全てやる必要はありませんし、制度として構築しなくてはならないということでもありません。このような、社員の前向きな行動を促す「働きやすい」「働きがい」のある取り組みを、出来るところから一つずつ実施していくことが大切でしょう。
  経営者の社員を大切にしようという思いに、社員はきっと応えてくれるものと思います

 

 

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