製造業の受注は堅調ながら、先行きへの慎重さは変わらず

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最終更新日: 2018年11月20日

県内主要産業の天気図は、製造業中心に「晴れ」や「薄日」が続く

    当研究所は、四半期ごとに長野県内の業界の景況感を調査するため、県内企業160社を対象に「産業別四半期見通し調査」を実施しています。今回は10月調査の結果についてご紹介します。
    この調査は、アンケートとヒアリングをもとに、県内産業の「現況」や「見通し」を天気マークで表しています。「晴れ」は「好調」、「薄日」は「順調」、「曇り」は「普通」、「小雨」は「低調」、「雨」は「不調」としています(図表)。
  7-9月期の現況を産業別にみると、製造業は国内・海外の好調な設備投資需要を背景に、「工作機械」のほか「半導体製造装置」、「電子部品・デバイス」、「光学・計器」が「晴れ」となっています。このほか「産業用機器」「自動車部品」、「プラスチック製品」が「薄日」です。非製造業では、「大型小売」「公共工事」で「小雨」の一方、「機械器具卸」「民間工事」「貨物」が「薄日」となっています。
   10-12月期も全体としては、製造業を中心に晴れや薄日が続く見込みです。

先行きへの慎重さは変わらず

   また、同時期に行った企業マインドを探る業況アンケート調査(対象先680社)によれば、各企業の企業マインドを示す「業況判断DI」(業況が「良い」と回答した企業割合-「悪い」と回答した企業割合)は、7-9月期の全産業が+1.1と前期に続きプラスを維持しましたが、3期連続で悪化しました。業種別では、製造業が+15.3と前期に比べ2.5ポイント悪化し、3期連続で前期を下回り、非製造業も前期比△0.8ポイントの△11.5とわずかに悪化しました。
   10-12月期の見通しは、全産業で△2.7と、マイナス水準まで低下する見通しです。製造業は+11.2と企業マインドの水準は高い見通しにありますが、今期に比べ低下する見込みで、先行きへの慎重な見方は変わっていません。一方、非製造業は引き続き水面下の状況で△15.3へ悪化する見通しです。 

米中の貿易問題の行方を注視

    労県内企業の多くが先行きに対して慎重な見方をしていますが、この背景の1つに米中の貿易問題の影響が挙げられます。そこで回答企業のうち84社について、自社への影響をヒアリング調査しました。米中貿易摩擦が自社に与える影響は、「既に影響が出始めている」という回答が全産業で11.9%にとなりました。業種別にみると、製造業は20.0%、非製造業は2.6%となっています。製造業への具体的な影響は、「受注減少」(85.0%)、「利益減少」(30.0%)、「原材料価格の上昇」(20.0%)などが上位になっています。また、「6カ月以内に影響が出る見込み」まで含めた割合は、製造業で46.7%となり、今後さらに影響が広がる可能性があります。
   米国は9月24日に対中制裁関税の第3弾を発動し、約22兆円相当の中国製品に10%の追加関税を課しています。これが2019年1月1日以降は25%へとさらに引き上げられる予定です。これにより既に中国からの受注減少が見られ始めており、貿易問題がさらにエスカレートすれば、拡大を続けてきた世界経済が失速する可能性も小さくはないと思われます。
   輸出にけん引されて緩やかに回復局面をたどってきた県内経済にとって、世界経済失速の影響は大きく、行方を注視する必要がありそうです

 

(初出:2018年11月7日付 南信州新聞「八十二経済指標」)

 

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