今後の労働力不足への対応を考える

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最終更新日: 2018年10月17日

影響が懸念される労働力人口の減少

    今後、人口減少、超高齢社会が進む中、懸念されるのが「労働力人口の減少」による影響です。労働力が減少することで経済活動が鈍化することが予想されます。労働力不足をいかに補うかが、今後の地域経済・産業の大きな課題となってきます。
そこで当研究所で2030年までの就業者数を推計したところ、15年の就業者数108万人から30年には93万5千人まで減少する見通しとなりました。

経済成長には労働力の増加と生産性向上が必要

   経済成長率は、労働力の増加率と労働生産性の上昇率からなります。推計のように今後、労働力が減少すると、経済成長率は下がっていくことになります。それを防ぐには、労働力の減少を抑制すると同時に労働生産性を高めることが必要になります。 

労働力の増加に向けて

    労働力を増やす対策として、ここでは3つ取り上げます。1つ目が女性の労働参加の促進です。出産・育児の時期を迎えても、就業を希望する女性労働者が離職しない環境を企業がいかに作るかがポイントです。そのためには育児中の女性の働きやすさに合った短時間労働、テレワークやフレックス制度等の柔軟な働き方の導入なども必要です。
   2つ目は高齢者の活躍です。活躍のポイントは、雇用形態、賃金体系、育成です。雇用形態では、高齢者には長い職業人生活を経て専門的なスキルを有する人が多いため、自社にはないシニア専門職やシニアエキスパート職など新しい職種を用意することは、人材の獲得につながるでしょう。賃金体系においては、「高年齢者雇用継続給付金」や「在職老齢年金」の支給を考慮し、60歳以降の賃金を低く設定する企業もあります。こうした賃金の低下がモチベーションを下げてしまう可能性があり、意欲のある人に見合った賃金体系を整備していくことが重要です。さらに人材育成においても、多くの企業でこれまで中高年向けの投資をおろそかにしてきた面があります。中高年人材の再教育が必要でしょう。
   3つ目は外国人労働者の活用です。日本で就職を目指す留学生を始めとした人材と企業とのマッチングの機会を一層増やす必要があります。ある企業では、社長自らが海外の学校を視察し、言語力や対応力といった面を判断し、優秀な研修生の確保に取り組んでいます。それぞれの違いを認め尊重することの重要性を社員に浸透させ、国籍や性別などに関わらず多様な人材を受け入れるダイバーシティ経営に取り組むことが求められます。

生産性の向上を「働き方改革」の目標に

   生産性の向上はどのような企業においても重要なテーマです。生産性向上に必要となる前提を考えてみると、まず、業務の「見える化」が必要となります。現在の業務内容を見える化し、無駄な業務はやめる。そして、残った業務の進め方を見直す。これが出来たところで、ITを導入する。こうした取り組みを通じて生まれた時間を、製商品・サービスの付加価値向上に注力することで生産性は上がります。
   このために不可欠なのが、各人のモチベーションです。顧客に心から欲しいと思ってもらえる高付加価値な商品・サービスは、高いモチベーションを持った人材でなければ作り得ないでしょう。そのためには、社員が当事者意識を持ち、言いたいことを言い合える社風をつくるなど、優れた労働環境の整備が必要となります。昨今の「働き方改革」もこうした高いモチベーションを持った人材を、社内でどれだけ育成できるのかが本来の目的なのではないでしょうか

 

(初出:2018年10月6日付 南信州新聞「八十二経済指標」)

 

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