今後も厳しい環境が予想される若い働き手の確保

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最終更新日: 2018年9月12日

深刻な人手不足の状況

    最近では「人手不足倒産」という言葉も聞かれるほど、求人に苦労する企業が増加しています。長野労働局が発表した「最近の雇用情勢」をみると、長野県の6月の有効求人倍率は1.72倍で前月に比べ0.02ポイント上昇しています。また各地域の労働需給の実態をより正確に反映するために、実際に就業する都道府県を求人地として試算した「就業地別有効求人倍率」でみると、長野県の求人倍率は1.81倍にまで上昇しています。雇用統計上は良好と言える数値ですが、人手の確保が難しい現状からすると、1人の求職者に対し1.81社が競い合う厳しい数値と見ることができます。

低い大学生のUターン率と更なる流出

   少子高齢化が進む中、今後企業が継続的に成長していくためには、特に若い労働者を確保していくことが重要です。
   こうした中、大学卒業後、Uターンする学生数の増加も期待したいところです。何故なら、県内高校生の県内大学等への進学率は17.1%に過ぎず、その他は県外大学へ流出してしまっているからです。近隣県を見ると、石川県は40%以上、新潟県、福井県、山梨県、静岡県はいずれも30%前後となっており、長野県は特に低い水準にあることが分かります。ところが、県外進学者のUターン就職率を見ると、2011年3月卒の44.1%をピークに減少傾向にあり、2017年3月卒は37.7%と4割を下回る状況にあります。
   更に近年の人手不足状況は、県内大学の卒業生の県外流出をも増加させています。県内の大学関係者の話によると、都市部の大手企業の求人増加に対し、これを好機と大手企業に就職を果たしている卒業生の数は従来以上の水準になっている様子です。 

県内企業の高校卒業生への求人倍率は2倍超え

    そのため、最近では県内高校生の新卒採用に重点を置く県内企業も増えています。高校生の卒業後の進路先を見ると、2018年3月に県内の高校を卒業した学生数18,844人のうち、短大を含めた大学等へ入学した人は8,996人、専修学校が約5,292人、就職は3,542人となっています。(文部科学省「2018年度学校基本調査(速報)」)。
   一方、長野労働局が8月に発表した「2018年3月高等学校卒業者の求人・求職状況」を見ると、企業からの求人数は6,686人に上っています。同調査での県内高校卒業者の求職者数は3,311人で大幅に求人が上回る状況にあり、求人倍率も2倍を超えています。

今後とも求職は求人にはるか及ばず

   過去5年間の県内高校卒業者の就職者数の推移をみると、2013年の3,242人から2018年は3,542人まで増加しています。進学ではなく就職を選んだ学生の中には、大学を卒業する4年後には東京五輪も終了し就職条件が厳しくなることを想定しての人もいるようです。しかしながら、企業の求人数にははるかに及ばない数字です。
   現状、企業の求人数は2010年から増加傾向にあり、1999年3月の7,786人以来の高い水準となっています。そのため、求人倍率も2010年の1.2倍から2.02倍と大きく上昇しています。
当然に個別の採用努力により、若い人材の確保には問題がないとする企業も多くあります。しかし、求職者、求人者の数値から分析するなら、今後も県内企業において「若い労働力」の獲得は厳しい状況が続くことが予想されます。
   この現状を前提とするのであれば、先ずは働く場としての魅力を高め、離職をなくし、今居る社員による生産性の向上を地道に進めることが重要と思われます

 

(初出:2018年9月5日付 南信州新聞「八十二経済指標」)

 

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