製造業の企業マインドは好調ながら、見通しは慎重に
県内主要産業の天気図は、製造業中心に「晴れ」や「薄日」が続く
当研究所は、四半期ごとに長野県内の業界の景況感を調査するため、県内企業約160社を対象に「産業別四半期見通し調査」を実施しています。今回は7月調査の結果についてご紹介します。
この調査は、アンケートとヒアリングをもとに、県内産業の「現況」や「見通し」を天気マークで表しています。「晴れ」は「好調」、「薄日」は「順調」、「曇り」は「普通」、「小雨」は「低調」、「雨」は「不調」としています(図表)。
7-9月期の見通しを産業別にみると、製造業は国内・海外ともに好調な設備投資需要を背景に、引き続き「工作機械」のほか「半導体製造装置」、「産業用機器」、「電子部品・デバイス」、「光学・計器」で「晴れ」の見通しとなっています。このほか「自動車部品」、「プラスチック製品」が「薄日」の見通しです。非製造業では、「大型小売」で「小雨」が続く一方、「機械器具卸」が「薄日」の見通しです。全体としては、製造業を中心に晴れや薄日が続く見通しとなっています。
先行きの企業マインドは慎重
また同時期に行った各企業の景況感を尋ねた業況アンケート調査(対象先681社)によれば、各企業の業況判断を示した「業況判断DI」(業況が「良い」と回答した企業割合-「悪い」と回答した企業割合)は、全産業の4-6月期のDIが+2.6と、5期連続でプラスを維持しましたが、2期連続で悪化しました。業種別では製造業のDIが+17.8と前期に比べ6.8ポイント悪化し、2期連続で前期を下回りました。非製造業のDIは前期比△0.2ポイントの△10.7とわずかに悪化しました。
7-9月期の見通しは、全産業で+0.8と、さらに低下する見通しです。製造業は+13.3とプラスながら今期に比べ低下する見込みで、企業マインドの水準は高い状況にありますが、先行きには慎重な見方が増えています。一方、非製造業は引き続き水面下ながら△10.4へ改善する見通しです。
人手不足はさらに深刻に
先行き慎重な見方の理由の1つが、人手不足の問題です。業況アンケート調査の雇用水準DI(「過剰」回答割合-「不足」回答割合)は、全産業で△44.7と、大幅な不足超の状況となりました。背景の1つに、より労働環境の良い就業先を求める動きがあります。長野労働局がまとめた「最近の雇用情勢」によれば、職を求める新規求職者数は前年を下回る状況にありますが、このうち「在職者」、いわゆる職に就きながら新しい職を求めている人は、前年を上回っています。こうした状況は今後も続くことが予想され、採用難と併せ、離職による人手不足は続くと思われます。
懸念される米中貿易問題の影響
もう1つの先行きに対する懸念材料が米国の通商政策に対する世界経済への影響です。7月、米国は貿易赤字削減に向け、中国に対し新たに食料品などの消費財や自動車部品などの工業製品等6,031品目の輸入制限を公表しました。これまでの動きであれば中国も同様の報復措置をとることが予想されます。米中の2つの経済大国の保護主義的な動きが与える世界経済への影響を注視していく必要があります。
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