長野冬季五輪から20年、五輪レガシーの継承を
長野冬季五輪の記憶はやや薄らぐ
平昌五輪が閉幕してから1カ月が経過しました。今年は、奇しくも長野五輪が開催されてから、20 年となる節目の年です。今回の平昌五輪を通じて長野五輪の記憶が蘇った方も多かったのではないかと思います。
今回は当研究所が今年1月に県内消費者1000人に対して行った「長野五輪に対する意識調査」結果をご紹介します。
まず、長野五輪開催をどの程度記憶しているかについて尋ねると、全体では「鮮明に覚えている」が21.7%、「ある程度覚えている」が55.7%となり、約8割の方が長野五輪を記憶していました。これを、長野五輪から約10 年が経過した07 年12 月に当所が実施した調査と比較すると、開催を「鮮明に覚えている」は23.0%から21.7%へとやや減少し、「ある程度覚えている」という回答割合は65.6%から55.7%へと1割程度減少しました。
20年経ていることから20代の「覚えていない」という回答が増えている要因もありますが、長野五輪の記憶がやや薄らいだことがうかがえます。
また、地域別には、「鮮明に覚えている」との回答割合は、競技施設等が集中していた北信が30.1%と最も高く、次いで東信が21.7%となる一方、中信は18.4%、南信は15.0%と地域によってばらつきがみられました。
ソフト面でプラスの効果を実感
次に、五輪開催に伴うプラス効果について、ハード面とソフト面に分けて尋ねてみました。
まずハード面としては、「新幹線が利用できるようになった」が58.9%と最も高く、次いで「高速道路(上信越自動車道等)が利用できるようになった」が36.4%、「オリンピックスタジアム(開閉式場)が利用できるようになった」が14.6%、「五輪競技施設が利用できるようになった」が14.1%などとなりました。ただ、10 年前の調査と比較すると、「高速道路が利用できるようになった」は75.7%から36.4%へと大きく減少するなど、回答割合は全ての項目で10年前の調査を下回りました。
ソフト面におけるプラス効果についても10 年前の調査の回答割合を下回る項目が多い中、「長野マラソンが開催されるようになった」が24.8%から29.2%へ、「外国人の受け入れによりもてなし方を学ぶことができた」は5.0%から11.2%へと増加しました。
これは、五輪開催を記念した長野マラソンが大きなイベントとして定着したことや、近年外国人観光客が急増している現状において、冬季五輪という世界的なイベントを開催して培ったノウハウを活かせる場面が増えていることなどが、背景にあると考えられます。
五輪レガシーの継承を
このように、現在は長野五輪の残したソフト面の効果が評価されるようになっています。当時は多くのボランティアが、街に溢れる外国人へのおもてなしに汗をかきました。今でも継続しているボランティア団体もいくつかあります。また「長野の知名度が向上した」とする回答も5割近くあり、冬季スポーツの盛んな欧州では特に「NAGANO」の知名度は高いようです。こうした知名度の高まりも、長野県を訪れる外国人観光客の増加につながっているものと思われます。
五輪開催を契機に生み出される持続的な効果は、五輪レガシー(遺産)と呼ばれます。長野五輪に対する県民の記憶や開催効果の実感は薄れつつありますが、開催を通じて築いたブランドやソフト面での効果は、五輪レガシーとしてしっかりと根付いています。五輪レガシーを今後もさらに磨きあげていくことが大切でしょう。
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