今後さらに期待される女性の労働力

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最終更新日: 2018年3月9日

減少する労働力人口

    長野県内の景気は製造業を中心に回復していますが、地域企業が今後も継続的な成長につなげていくためには、新たな人材の獲得が必要になります。しかし最近は深刻な人手不足が続いており、特に新卒採用は非常に厳しい環境にあります。こうした背景の1つに「労働力人口」の減少があります。
   国勢調査によると、この労働力人口は1995年の124万人をピークに減少傾向で推移しています。男女別でみても男性は95年の72万人をピークに、女性は00年の52万人をピークに減少しています。その結果、15歳以上人口に占める労働力人口の割合を示した「労働力率」は男性が95年の81.6%から15年は72.1%にまで低下しています。

人手不足を支える女性の労働力

    一方、女性の労働力率はこれまで低下傾向にありましたが00年の52.3%から15年は52.7%と上昇に転じています。男性の労働力が低下する中で女性が労働力を支えていることがわかります。近年における法整備により、働く意欲のある女性の支援策を充実させたことなども労働力を支えている一因になっていると考えられます。
   こうした動きは賃金面にも反映されています。今年2月末に厚生労働省が公表した17年賃金構造基本調査をもとにみてみたいと思います。
   まず賃金の水準ですが、17年の長野県内における女性のフルタイム労働者の所定内給与額(残業代、諸手当除く6月分)は22万2,300円となっています。前年の22万9,500円からは減少しましたが、男性の賃金が伸び悩む中で女性の賃金は12年以降16年まで5年連続で増加しています。また男性との賃金格差(男性賃金=100)を計算してみると年々縮まっており、08年の67.9が17年は73.5となっています。このほか女性の短時間労働者の1時間あたりの賃金も伸びています。17年は1,033円と前年にくらべ38円アップし、1,000円台となりました。企業が人手不足の対応として、女性への期待を高めていることが賃金面からもうかがえます。 

女性の初任給が男性を上回る地域が増加

    女性への期待は新卒採用における初任給の状況にも現れています。まず全国の水準ですが、17年の全国の大学卒の初任給は男性が前年比0.9%増の20万7,800円、女性は同2.1%増の20万4,100円となっています。男女ともに14年以降上昇傾向にありますが、17年は特に女性が男性を大きく上回る伸び率となっています。女性の初任給を都道府県別にみると、最も高いのは千葉県の22万6,200円に対し男性は21万1,400円となっており、次いで岩手県22万3,800円に対し男性19万6,100円、岐阜県21万7,900円に対し男性21万3,200円と上位3県はいずれも男性を上回っています。
   長野県の状況ですが、17年の大学卒初任給は男性が19万9,100円と前年の20万2,300円を下回りました。一方、女性は19万9,300円と前年の19万4,400円から増加したことに加え、女性の初任給が男性を上回りました。
   このように今年の調査結果の興味深い点として、大学卒の女性の初任給が男性を上回った地域は16年が2県だったのに対し、17年は長野県を含め11県にまで増えていることが挙げられます。
   人手不足の中で、優秀な女性の人材の引き合いが各地にも広がっていることがうかがえます。今後もこうした傾向が続き、男女間の格差が縮まっていくのか、今年の賃金の動きが注目されます

(初出:2018年3月8日付 南信州新聞「八十二経済指標」)

 

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