長野県内で動き出したワイナリー観光<2017.12.8>

印刷

最終更新日: 2017年12月8日

 ワイナリー観光の課題解決に向けた新たな動き

 長野県はワイン産業の発展のため2013年に「信州ワインバレー構想」を策定し、地域の特性を活かした4つの魅力的なワイン産地(千曲川ワインバレー、日本アルプスワインバレー、桔梗ヶ原ワインバレー、天竜川ワインバレー)の形成を目指しています。そして同構想の中で、10年後の目標値の一つとして「ワイン関連の観光客の入り込み数:20%増加」を掲げています。
 ワイナリー観光の課題には、飲酒に伴う自家用車での来訪の難しさや、多くが郊外や中山間地域に立地するワイナリーへのアクセスの問題があります。そうした中、循環バスを上手く活用し、新たなワイナリー周遊策を展開する取り組みが県内で動き出しました(図表)。

塩尻市・東御市の周遊バス事業とワインポータル

 塩尻市は、ワイナリー循環バスや塩尻駅からの二次交通を望む多くの声を受け、2017年9月に、市中心部や駅とワイナリーを結ぶ無料のシャトルバス事業を実施しました。バスの利用者数は約500人となり、そのうち市外(県外含む)からが約4分の3を占めるなど、本事業が、遠方からの観光客の取り込みにつながったことがうかがえます。
 東御市は、ワイナリー来訪者の回遊性を高めて市内の滞在時間や観光消費を増やすため、17年9月~11月に、田中駅を起点にワイナリーや観光地を巡る周遊バス「まるっと信州とうみ号」を運行しました。多い日には1日当たり15人以上が利用したほか、しなの鉄道との連携で発売された、軽井沢駅-田中駅間の往復鉄道乗車券とバス乗車券がセットで割引となる特別切符も好評でした。
 これらの両市には、近年、地元ワインに関する情報発信拠点(ワインポータル)とも言える飲食店が開店しています。主な例として、塩尻駅前の「フォンターナデルヴィーノ」(開業2012年)や、田中駅から徒歩数分に位置する「TOMI WINE CHAPEL(東御ワインチャペル)」(同16年)があり、いずれも、地域の食材を用いた料理とともに、地元産ワインの飲み比べを楽しむことができ、ワイナリー観光の拠点として、周遊観光事業との一層の相乗効果が期待されます。

自治体・事業者同士の協力強化と、ワイナリーの受け入れ態勢整備が求められる

 ワインは地域の自然や文化と密接に関わるため、ワイン関連の観光振興は地域に与える効果も大きくなります。長野県がワイン先進地として大きく飛躍するためには、個性豊かなワイナリーを巡る周遊観光をいかに地域に根付かせるかが重要です。
 今後は、自治体や交通・観光事業者同士の協力体制を強化していくことに加え、来訪者の増加に備えた各ワイナリーの受け入れ態勢の整備も必要となるでしょう。

 

※ワイナリー観光については、弊所機関紙「経済月報2017年12月号」の産業レポート『動き出したワイナリー観光』で県外の事例も含めて詳しくレポートしています。ぜひ、ご覧ください。

(2017.12.8)

 

関連リンク

 

 

このページに関するお問い合わせ

産業調査

電話番号:026-224-0501

FAX番号:026-224-6233