統計からみた県内製造業の動向

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最終更新日: 2017年10月27日

2015年の製造品出荷額等は7.8%の増加

   長野県の主要産業である製造業の2015年の動向をまとめた調査結果が長野県から公表されました。それによると、従業者数4人以上の県内事業所の製造品出荷額等は5兆8,794億円と前年に比べ7.8%増加し、3年連続で前年を上回りました。13年以降、製造業が順調に回復していることがうかがえます。
   産業別には、「情報通信機器」が1兆573億円と最も高く構成比で18.0%を占めています。次いで「電子部品・デバイスなど」が7,729億円(13.1%)、「生産用機器」が5,880億円(10.0%)となっています。
   広域圏別では、市町村別のトップである塩尻市、3位の松本市、5位の安曇野市を含めた松本地域が全体の29.1%を占め、次いで長野地域(19.7%)、上伊那地域(12.3%)となっています。特に松本地域は前年に比べ2,128億円、長野地域は1,744億円増加し、この2地域が全体の増加に大きく寄与しました。一方、飯伊地域は3,768億円(6.4%)と前年に比べ3.8%減少しました。

輸出出荷額は減少傾向

   長野県全体の製造品出荷額等が増加傾向にある一方、長野県の輸出出荷額は減少傾向にあります。今年8月に県が公表した2015年輸出生産実態調査結果(速報)によれば、輸出出荷額は7,724 億円で前年に比べ22.4%減少し、2年連続で前年を下回りました。
   輸出先別にみると、中国(香港を含む)が1,972億円(前年比15.7%減)と最も多く、次いで米国が1,459億円(同20.6%減)、台湾が459億円(同0.7%増)となりました。地域別には、アジア向けが4,220億円(同19.0%減)となり輸出出荷額の54.6%を占めています。
   長野県の輸出出荷額は、中期的にみると08年以降減少傾向にあり、15年はピークだった09年の5割の水準まで低下しています。製造品出荷額等が13年以降増加傾向にある中で、輸出が減少傾向にある背景には海外の景気動向に加え、構造的な変化などの要因もあると思われます。 

重要性を増す海外市場

    海外の景気動向には、08年のリーマン・ショックによる世界的な景気の落ち込みや15年の中国の景気減速などがあります。一方、構造的な要因としては、リーマン・ショック以降およそ5年に渡る円高で、再び製造拠点の海外移転が進んだことがあります。ただ、近年の海外移転は従来と様相を変えてきています。
   1990年代、県内の製造業はコスト削減を目的に人件費の安い中国への拠点整備を進めました。しかし、最近は人件費高騰により中国への拠点設置の動きは一段落しており、代わりに、より人件費の安いASEANなどへの拠点集約、拡充をする動きがみられています。それによりASEANなどの拠点から中国や第三国への輸出が増加していると思われます。
   人口減少などにより国内需要の縮小が予想される中、グローバル市場にはまだ伸びしろがあります。輸出にせよ、現地生産にせよ県内製造業者にとって海外市場の重要性は今後ますます高まっていくと思われます

(初出:2017年10月5日付 南信州新聞「八十二経済指標」)

 

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