新幹線開通で変化した人の流れ

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最終更新日: 2017年9月19日

新幹線開通から20年

   1997年10月1日に長野新幹線が開通してから20年になります。そして、10年後にはいよいよリニア中央新幹線が開通する予定です。長野県の高速交通網の整備がさらに進むことで、人々の暮らし方にも大きな変化が生まれる可能性があります。では、この20年で人の流れはどのように変化したのでしょうか。
  今年公表された国勢調査には、就業地や通学地などのデータがまとめられており、こうしたデータから新幹線開通前と現在の就業や通学などによる人の流れの変化が比較できます。国勢調査は5年ごとのため、新幹線開通前の1995年と直近の2015年のデータを使って長野県から東京都への就業者・通学者数(ともに15歳以上)の変化をみてみました。

急増した東京への就業・通学者

    開通前の95年の調査では、長野県内から東京都への就業・通学者数は787人でした。これを新幹線沿線地域の東北信地域とそれ以外の中南信地域に分けて比べてみると、東北信地域から東京都への就業者数・通学者数は375人、中南信地域は412人と、新幹線開業前は中南信地域の方がやや多い状況でした。それが15年調査では、県内から東京都への就業・通学者数は全体で4,691人と95年に比べおよそ6倍に増えています。地域別では東北信地域が2,991人となり、中南信地域の1,700人を大きく上回りました。
    これを就業者、通学者別にみると、就業者数は627人から3,052人(4.9倍)に、通学者数は160人から1,639人(10.2倍)に増加しました。人数の面では就業者の方が引き続き多い状況ですが、増加率では通学者の方が大きくなっています。さらにこれを地域別にみると、東北信地域の就業者数は312人から1,992人(6.4倍)に、通学者は63人から999人(15.9倍)に急増しており、沿線地域からの新幹線を利用した通勤・通学が大幅に伸びていることがうかがえます。一方、東京都内から長野県内への就業・通学者数の変化は、10%の増加にとどまっています。 

未来に向けた地域づくりを

    新幹線駅が設置された県内自治体では就業・通学の状況が大きく変化しました。特に佐久市では、20年間で東京都への就業者数は16人から251人へ、通学者数は3人から110人へ就業・通学ともに大幅に増加しました。こうした背景には、佐久市が転入者を対象に通勤費の補助を行っているほか、佐久平駅から東京駅までの新幹線通学定期料金は3カ月で268,940円のため、都内での住居費・生活費と比較して佐久市から通学した方が得だという経済的な理由もあるとみられます。参考までに20年間の人口の変化をみると、新幹線駅が設置された佐久市は97,813人から99,368人へと増加したほか、軽井沢町も15,345人から18,994人へと人口が増加しています。新幹線の開通をきっかけに通勤・通学といった人の行動範囲が広がったことが人の流出防止につながり、IターンやUターンなどによる移住にもつながったと考えられます。
   10年後のリニア中央新幹線の開通時には、中南信地域を中心にこうした変化が起きることが予想され、人の流れが大きく変わる可能性があります。
   移動時間の短縮は、人が行動する範囲のみならずその選択肢も広げます。未来を見据えて働く場や暮らしやすさなど長野県が魅力ある地域として選択してもらえるよう地域づくりを考えていくことが重要です

(初出:2017年9月6日付 南信州新聞「八十二経済指標」)

 

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