大型商業施設と地域商店の連携を促進する「地域貢献活動ガイドライン」<2017.8.10>

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最終更新日: 2017年8月10日

 大型商業施設と地域との連携を積極的に促す茨城県

 大型商業施設の新規開業が全国各地で相次いでいますが、大型商業施設の進出は、地域に雇用創出や税収増加などの効果をもたらす一方、地元や周辺地域の既存商店街の衰退につながるといった影響も指摘されます。こうした負の影響を少しでも減らし、商業の活性化を図るため、都道府県として大型商業施設と地域の連携を促進する例がいくつかみられます。中でも、積極的な施策を展開している自治体が茨城県です。
 全国で大型商業施設が増加した2000年代、茨城県は新設届出件数が毎年全国上位になるなど、地域における大型商業施設の存在感が年々高まっていました。また、県内の商工団体からも大型商業施設と地域との連携に対する要望が寄せられていました。こうした動きを受け、茨城県商工労働観光部は、大型商業施設と地域が連携してまちづくりや地域商業の活性化に取り組むことを促進するため、2010年に「大規模小売店舗の地域貢献活動ガイドライン」を策定しました。

地域懇談会の開催により連携に向けた接点を生む

 本ガイドラインでは、床面積が1万㎡を超える大型商業施設に対し、営業年度ごとに「地域貢献活動計画書」と、同計画書に基づく活動状況をまとめた「実施状況報告書」を県へ提出するよう求めています。さらに、立地する地域の商工会議所等と協議し、地元の行政、自治会、まちづくり団体などを加えた「地域懇談会」を少なくとも年1回、最低3年間は開催するよう明示しています。この地域懇談会の開催が、大型商業施設と地域との間に接点を生む契機となっています。
 さらに、本ガイドラインが求める商業振興策の一環として、茨城県は2010年から12年の3年間に「大型店と地域商店の連携フェア」という、大型店のイベントスペース等を期間限定で地域商店に貸し出す取り組みを実施しました。その結果、3年間で506店の地域商店が参加し、来場者(レジ通過客)は延べ53,000人に達し、出店者の売上合計は4,500万円になりました。

中心市街地における大型商業施設と商店街の連携事例

 また、ガイドラインの内容や各大型商業施設が実施している地域貢献活動を周知するため、県は2016年から「活動事例集」を作成しています。その中で、地域連携による商業活性化事例として紹介されている活動に、水戸市における「みとペタ+ワンコイン商店街」の取り組みがあります。
 これは、水戸市の中心市街地で従前から開催されていた、3つの大型商業施設主催の買い回りスタンプラリーと、商店街をワンコイン(100円もしくは500円)で買い物をしながら巡るイベントを統合した催しで、14年から始まりました。大型商業施設と商店街の両方で買い物をしながらスタンプを集めるため、特に商店街の個別商店にとっては、集客だけでなく販売促進の面でも効果がみられています。スタンプの押印数を大型商業施設・商店街別にみると、商店街が6割超を占めているほか、押印の対象となるワンコイン商品以外の商品も販売が増えたという商店が多くなっています。
 

自治体や商工会議所等も関与し、連携の輪を広げる

 本ガイドラインでは、大型商業施設が取り組む地域連携活動に対し、まちづくりの中心的な存在である市町村や商工会議所等も積極的に関与し、連携事業における補助金の活用や広範囲の広報、企画の立案・運営といった面でのフォローを求めています。大型商業施設と地域の既存商店との連携に、自治体や商工会議所等がコーディネーターとして加わることで、活動が円滑に進み、より連携の輪が広がることが期待されます。
 こうした、大型商業施設と地元との連携を促進するガイドラインを通じた取り組みは、商業の活性化を目指す地域においても参考になるのではないでしょうか。
 

大型商業施設と地域の既存商店との連携については、弊所機関紙「経済月報2017年8月号」の調査「大型商業施設と既存商店街の共存に向けて」で詳しくレポートしています。ぜひ、ご覧ください。

(2017.8.10)

 

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