戦後3番目の長さながら回復実感が乏しい景気回復局面

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最終更新日: 2017年7月12日

全国の景気回復局面は戦後3番目の長さに

    内閣府が6月に発表した月例経済報告によると、足もとの景気は「緩やかな回復基調が続いている」として、半年ぶりに判断を上方修正しました。
    こうした中、6月15日に内閣府の景気動向指数研究会(有識者会議)が約2年ぶりに開催されました。この研究会では統計データなどをもとに、景気の転換点である「景気基準日付」の設定を議論します。判定する上で重要な統計指標が「景気動向指数」で、この指数は生産や消費、雇用など9つの部門を代表する29の指標をもとに作成されています。
    景気動向指数は、コンポジット・インデックス(CI)、ディフュージョン・インデックス(DI)という2つの指数からなり、景気の山谷を見極め、回復期にあるか後退期にあるかを判断する際には、ヒストリカルDIを用います。現在は、2012年11月を谷として回復局面にあるとされています。
    今回の研究会での焦点は、14年に導入された消費増税後の落ち込みに伴う「山」の判断でした。当時は増税後の反動により個人消費などが低迷しましたが、「景気が『山』をつけたのか、また景気後退に陥っていたのか」という点が議論されました。その結果、増税後の落ち込みは過去に比べると、その度合いが小さく、後退期には陥らなかったとの判断がされ、「山」の認定には至りませんでした。これにより12年12月から始まる景気回復局面は、今年の4月で53カ月となり、戦後3番目の長さとなりました。さらに今年の8月まで回復局面が続けば2番目に長い「いざなぎ景気(57カ月)」に並ぶことになります。

長野県も景気回復局面が続く

    長野県の景気動向指数は当研究所が作成しており、景気基準日付も設定しています。長野県の直近の景気の谷は、暫定で12年12月となっています。全国で議論になった14年の増税後の落ち込みを検討すると、各指標とも大きな落ち込みには至っておらず長野県も景気の回復局面が続いているという結果になりました。
    14年4月以降の長野県経済を振り返ると、自動車や大型小売店販売の落ち込みを中心に、個人消費が低迷し、企業の景況感も大きく悪化しました。しかし、年後半から海外経済の回復により輸出が増加に転じ、さらに円安も加わることで輸出関連を中心に企業業績が改善したことで緩やかな回復基調へと戻りました。14年度の長野県の実質GDPは1.0%の増加となり、駆け込み需要が生じた前年度の成長率を上回るとともに、全国でも9番目の高成長となりました。
    13年1月以降、長野県も景気回復が続いているとすれば、すでに1985年以降のバブル期を抜き、全国同様「いざなぎ景気」に迫る長い景気回復局面となります。
    しかし、消費者にとっては回復実感が乏しいのが現状です。その理由の1つとして、企業収益が増えても賃上げが進まず、企業が内部留保を優先してきたことが挙げられます。ただ、最近では企業の設備投資もようやく動き始めており、内部留保を取り崩す動きもみられます。設備投資の増加が生産増加に結び付き、それが企業収益を押し上げ、さらなる設備投資を促すという経済の好循環につながることで、賃上げが進み所得環境が改善してくると、ようやく回復を実感できるようになるのではないでしょうか。

(初出:2017年7月5日付 南信州新聞「八十二経済指標」)

 

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