今年の経済の振り返りと新年の展望 ~2017年は緩やかな回復へ~

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最終更新日: 2016年12月27日

2017年は緩やかな回復を期待

   2016年のわが国経済を振り返ると、中国など新興国の景気減速や円高の進行により、実質GDP(季節調整値)は、直近の7-9月期で前期比0.3%(年率換算+1.3%)と3四半期連続のプラスとなったものの低成長にとどまり、足踏み状態が続きました。なお、11月の米大統領選後は円安基調に転じています。
 2017年の日本経済を展望すると、円安進行による企業収益の改善や、海外経済の持ち直しにより、輸出および生産の緩やかな回復が予想されます。また、公共工事の増加による景気の押し上げも期待されます。一方、個人消費は、所得の改善の遅れとともに、円安等を背景とした物価上昇に伴う実質所得の低下から弱い動きが予想されます。
 景気のリスク要因としては、米国次期政権による政策運営や英国EU離脱などの世界経済への影響、石油輸出国機構(OPEC)の減産合意に加え、為替相場で急速に円安が進行した場合の燃料価格等の上昇、中国など新興国経済の下振れ、などが挙げられます。

長野県も緩やかな回復を期待

    では、県内はどうでしょうか。2016年の1年間を振り返ると、全国同様、製造業では円高進行の影響から輸出関連企業を中心に企業収益が悪化し、景況感が冷え込みました。ただ、観光面を中心に景気の下支え要因に恵まれた年でもありました。3月に飯田お練り祭り、4月から5月にかけて諏訪御柱祭が開催され、多くの観光客で賑わいました。また、大河ドラマ「真田丸」の放映による誘客効果も大きなものがありました。
 2017年の長野県経済を展望すると、全国同様、緩やかな回復が予想されます。
生産面では、自動車関連やスマートフォンなど新製品向け部品の需要増加が期待され、電子部品・デバイスや光学・計器などの関連業種で業況が改善する見通しです。ただ、これまで旺盛だった北米の完成車需要の一服が予想され、関連する機械・部品製造業では受注への影響も懸念されます。
 個人消費は、所得環境の改善の遅れから弱い動きが予想されます。設備投資は、補助金政策などから機械の維持・更新投資のほか、小売店舗や福祉関連の建設投資が見込まれ、底堅く推移する見通しです。公共工事は、前年度の補正予算の執行により、比較的高い水準の工事量が維持されますが、人手不足による人件費の増加や原材料価格の上昇が懸念されます。住宅投資は、住宅ローン金利の低下による新設需要や相続税対策としての貸家需要、国の補助金制度を活用したリフォーム需要などの増加が期待されます。
 観光面では、大河ドラマ「真田丸」効果の剥落が懸念されますが、円安による外国人観光客の増加や、7月から県やJR等が実施する「信州デスティネーションキャンペーン(DC)」による集客が期待されます。ただ、急激な円安が進んだ場合には、燃料費や材料費等各種コストの増加につながることから、観光関連産業でも収益を下押しする懸念があります。

期待される次の10年に向けた地域づくり

 飯田地域では2027年のリニア開通に向け、トンネル部分や作業用道路の整備、新駅建設予定地等の工事が進められています。今後も10年後のリニア開通に向けた街づくり、産業づくりがさらに進められることが期待されます。そうした中、長野県でも「長野県航空機産業振興ビジョン」が策定され、いよいよ当地域での航空機産業育成の取り組みも本格化します。飯田メディカルバイオクラスターと併せ、地方創生のための具体策を練り上げ、行動する1年になることを期待したいと思います。
 

(初出:2016年12月27日付 南信州新聞「八十二経済指標」)

 

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