増税の再延期も県内消費はプラスに働かず

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最終更新日: 2016年9月8日

消費マインドが抑制傾向に

    当研究所は県内消費者を対象に1月と7月の年2回、「消費動向アンケート調査」を行っています。2016年7月に実施した直近の半年間(16年1月から6月まで)の調査結果がまとまりましたので、概要をお知らせします。
   今回の調査では、消費マインドを示す「支出DI」(DI:「増加」割合-「低下」割合)のほか「収入DI」、「耐久消費財DI」、「暮らし向きDI」のいずれも前期(2015年7月から12月まで)に比べ低下しており、消費マインドは抑制傾向にあったことがうかがえます。 

消費増税の再延期発表後も続く消費の抑制志向

   このように消費に対する慎重な姿勢が強まった要因の1つとして、年明けからの金融、為替市場の不安定な動きが挙げられます。加えて英国の国民投票によるEU離脱決定もこの不安定な動きに拍車をかける形となりました。
   もう1つの要因は所得面の改善が進まなかったことです。収入面では前期に比べ収入が「増加した割合」から「減少した割合」を差し引いた「家計収入DI」(%ポイント)が△11.0と前期より12.3ポイント低下し、2期ぶりにマイナスとなったほか、夏季賞与の動向をみても、「前年より増加」との回答割合は15.7%と前年(29.1%)を下回っています。 

背景には金融市場の動揺と改善が進まない所得環境が

   こうした中で、6月には消費増税の再延期が発表されました。増税の再延期は消費者の心理にどのような影響を及ぼしたのでしょうか。そこで増税再延期発表後の消費の支出意向を尋ねると、全体では「特に変わらない」が72.1%と最も多くなりました。一方で「支出を増やしたい」との回答割合は2.5%にとどまり、「支出を減らしたい」(23.8%)を大きく下回っています。このように消費増税の再延期発表は、消費抑制を和らげる方向にはあまり働かなかったことがうかがえます。

消費に求められる「コト」へのきっかけ作り

   今後の消費の喚起を考える上で注目されるのが「メリハリ消費」です。これは支出を増やすものと抑制するものを、自らよく見極めた上で消費を行うものです。前年の同時期に行った調査では、こうしたメリハリ消費の意向のある割合は全体の約8割を占めていましたが、今回の調査でも同様の高い水準にあり、自らが価値を認めた商品・サービスに対しては支出を抑制していないことがうかがえます。このように消費者は決して節約一辺倒ではなく、自ら納得できるものに対しては積極的に消費を行う意向があるのです。
   では、どういったものを節約し、どのようなものに対し前向きな消費をしたいと考えているのでしょうか。節約したいとする具体的なものの上位では「外食」、「衣類・履物」、「食料品」などのいわゆる「モノ」が多くなっています。一方で、前向きな消費をしたいものでは、「旅行」、「趣味・イベント」などの「コト」への消費意向が高く、特に前年度との比較では、健康に対する需要の高まりがみられました。
モノからコトへ消費がシフトしていく中で消費を喚起していくためには、今後はコトへのきっかけ作りが一層求められてくるでしょう。
 

(初出:2016年9月8日付 南信州新聞「八十二経済指標」)

 

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