皆の強みを活かすダイバーシティ経営<2016.09.01>

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最終更新日: 2016年9月5日

   人口が減少し、高齢化が進む今日、労働者の確保は重要な問題となっています。そのため、企業には女性や高齢者、外国人など多様な人材を活用していくことが求められています。加えて、多様性により企業の競争力を高めていこうとする「ダイバーシティー経営」が注目されています。

 経済産業省でもこうした動きを促進するため、成果を出している企業を「新・ダイバーシティ経営企業100選」として選定しています。県内からは昨年度、高森町の協和精工が選ばれました。2000年より経営のかじを取ってこられた堀政則社長に取り組みや思いをうかがいました。

 同社は、産業ロボットなどに搭載する電磁ブレーキの設計・製造や医療機器向けの部品などを製造するメーカーです。どこにも負けない高付加価値メーカーとなるために「人を生かす経営」を標榜(ひょうぼう)しています。

 医療分野への参入に併せて、ここ5、6年の間に80人ほどの「多様な人材」を採用し、従業員規模を倍にしています。大手メーカーを卒業したシニア人材に始まり、ファミレスの店長や建設会社の営業、障がいがある方、と多彩です。背景には堀社長の「企業が生き残っていくためには、様々な能力の結集が必要」「障がい者にも各自の特長を生かした雇用の場があるべきだ」との強い思いがありました。

 シニア人材は大手メーカーで培った生産管理技術を「社内塾」で若手に伝授し、増益につなげています。従来、技術屋ばかりで内向きだった組織は、管理職経験者によって団結力が増しています。そして元気な営業マンにより、未知の事業分野に対してもちゅうちょなく飛び込んでいける「野武士集団」になっています。

 また、毎月の業績を全員が見えるようにし、従業員のやる気も引き出しています。業績が悪ければ、どのようにしたらいいのか「改善案」が出てきます。特に女性を中心としたパート社員からの改善提案は多く、優秀な女性の正社員化も積極的に進めています。

 活躍している5人の障がい者の生産性も高く、給与水準は健常者と同じです。例えば、知的障がいがある社員の場合、通常数カ月で覚える工程も2年ぐらいかかります。作業にも時間はかかりますが、丁寧でミスが少ないため、結果として生産性は健常者と差はありません。入社から11年目の現在では、専門人材として若手の育成にあたっています。

 「誰もが強みを持って会社のために貢献できる」「管理者の重要な仕事は部下の強みを見いだし、組み合わせること」と堀社長はダイバーシティー経営を進める視点を語ってくれました。

 それぞれの強みをいま一度認め合う時なのだろうと思います。

 (初出)朝日新聞平成28年9月1日朝刊「けいざい応援通信」『多様な人材、強みを生かす』 

小澤 吉則(おざわ よしのり)

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