長野ワインで地方創生<2016.07.28>

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最終更新日: 2016年8月9日

 5月に開催された伊勢志摩サミットでは、ランチとディナーで県産ワインが3種類選ばれました。メルシャン(東京都)が上田市で管理する畑「マリコ・ヴィンヤード」のブドウを使った「オムニス 2012」と、須坂市、高山村、長野市で栽培されたブドウを醸造した「北信シャルドネ 2014」。そして、ヴィラデストワイナリー(東御市)の「ヴィニュロンズ リザーブ シャルドネ2014」です。 

 県は2013年に信州ワインバレー構想を立ち上げ、今年度からは県庁内に日本酒・ワイン振興室を設けるなどワインの振興に努めてきました。そうした取り組みが「長野ワイン」の背中を押したものと思われます。

 ヴィラデストワイナリーの代表で、信州ワインバレー構想推進協議会の会長も務める玉村豊男さんに、ワインづくりにおける県の強みや自社ワインの特徴、今後の方向性をお聞きしました。

 ワインをつくる上で、県の冷涼な気候は最大の強みです。ブドウは熟すにつれ酸が落ち甘くなりますが、甘いだけではおいしいワインはできません。県の涼しい気候は、ブドウが完熟した際に甘い中にも酸味を残し、奥行きのある味を引き出します。

 「気候のほか、立地やブドウの特性を生かし切るのがヴィラデストワイナリーの技術力です」。玉村さんは小規模メーカーゆえの強みを教えてくれました。

 同社では、ワインづくりに適しているといわれる水はけのいい土地ではなく、粘土質の土地でブドウを栽培しています。「粘土質の土壌は栄養分をため込むことができるので、そこでつくったブドウも味が濃くなります」と玉村さん。さらに機械に頼らず、ブドウの選果から仕込みまで全て手仕事。「小規模だからこそ徹底的に手間ひまをかけられます。そのこだわりこそが我が社のブランドで、それを認めていただいた」と玉村さんは語ります。

 玉村さんは今後、地域にワイナリーを集積させ、そこから農業を核とした新しいライフスタイルを生み出していきたいと語ります。「ワインは作り手や土地により味が全て違う。ワイナリーがあればあるほど多彩なワインを提供でき、ブドウ畑が多く連なることで美しい観光資源としての価値も増す」と指摘します。

 昨年、玉村さんはワインづくりの担い手を育成するため「千曲川ワインアカデミー」を開設し、24人の卒業生を輩出しています。アカデミーには人材や情報が集まり、その地域のワイン産業をブレークさせる拠点にもなります。

 「地域が豊かになることで自分も豊かになる」。地方創生が叫ばれていますが、地域との共存共栄で成長するワインづくりから学ぶべき点は実に多いように思います。

(初出)朝日新聞平成28728日朝刊「けいざい応援通信」『ワインづくり 地域と共存共栄』

 

小澤 吉則(おざわ よしのり)

 

 

 

 

 

 

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