モノづくりからコトづくり<2016.06.15>

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最終更新日: 2016年6月16日

 ここ数年の景気の持ち直しで消費は回復傾向にありますが、全般的には財布のヒモはまだまだ固いようです。しかし、そうした環境下でも、自分が大切にしたいものにはしっかりとお金をかける消費も増えてきています。

 当研究所が実施した消費動向調査からもそのような傾向が見て取れます。「普段から節約するものと、お金をかけるものとを自分の中で分けていますか」との問いに対しては、「あてはまる」が35%、「ややあてはまる」が45%と8割の消費者がそのような行動をとっています。

 では、節約するものとお金をかけるものは、それぞれどのようなものでしょうか。

 「節約したい商品・サービス」を尋ねると、「光熱費」、「外食」、「衣類・履物」、「通信費」、「食料品」など日常の中で消費されるモノに対する回答が多くなっています。一方、「前向きに支出を増やしたい商品・サービス」を尋ねると、「旅行」、「趣味・イベント」、「住宅・リフォーム」、「塾・習い事」、「スポーツ」など自ら体験するサービスなどの分野が中心になっています。「前向きな支出を増やしたい理由」としては、「家族のため」、「健康維持・増進のため」、「自分・家族の将来のため」、「ストレス解消のため」、「趣味・興味分野のため」などが挙げられ、自分や家族が楽しく、健康に暮らすための消費を増やしたいという意向がうかがえます。

 つまり、現在の消費の傾向は、日常的なモノは節約しても、人生を楽しく、豊かにするようなコトには必要なお金を使っていきたいということでしょう。「モノ消費」から「コト消費」へのシフトと言われている変化です。

 では、モノを作る産業はもうダメなのかというと、そういうことではありません。価値あるモノを作り、それを使うことで顧客がどのように幸せになれるのかをしっかりと伝えていく必要があります。県内製造業でも、モノに付随するサービスを作り上げ、充実させることで、新たな顧客を創出している企業も少なくありません。

 継続的に物価が下がり続けるデフレ経済下においては、似たようなモノが溢れる中、価格競争が繰り広げられてきました。そこでは、モノの価値が置き去りにされてきたのではないでしょうか。

 デフレ状態にある経済から真の脱却を図るためにも、今までにないモノを作り、その価値をしっかりと伝えていくことが求められているのだと思います。

 

(初出)朝日新聞平成28615日朝刊「けいざい応援通信」『高質な物作り今こそ』を一部加筆修正

 

小澤 吉則(おざわ よしのり)

 

 

 

 

 

 

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