慎重姿勢にある製造業の設備投資計画

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最終更新日: 2016年6月8日

2016年度の設備投資は、ほぼ横ばいの計画

  当研究所は、長野県内企業の設備投資動向を調査する目的で、県内企業約700社を対象に「設備投資動向調査」を年2回実施しています。4月には年度当初計画の調査を行い、10月には年度の実績見込額と当初計画に対する修正状況の調査を行っています。今回は4月調査の結果をもとに2016年度当初計画の状況をご案内します。
 16年度当初計画額は、全産業で前年度実績見込額に比べ0.1%の増額とおおむね横ばいとなりました。業種別では、製造業が同△8.7%の減額計画となる一方、非製造業は同+26.3%と増額計画になりました。また、全産業の投資方針(かなり積極的、ある程度前向き、やや抑制的、かなり抑制的)をみると、「前向き(かなり積極的+やや前向き)」の回答割合が7期ぶりに前年度を下回り、慎重な投資姿勢がうかがえる結果となっています。 

製造業、非製造業で異なる投資姿勢

  16年度当初計画の注目点は、製造業と非製造業で投資姿勢が異なることです。製造業の最近2年間の設備投資は、自動車産業の回復などの恩恵もあり高い水準を維持してきました。かなり大規模な投資を行った企業もあり、今年度はその反動の影響も少なからず出ていると考えられます。さらに、中国をはじめとする新興国経済の減速に伴う先行きへの懸念や需要見通しの悪化により、製造業全体の約7割を占める機械工業は△5.2%の減額計画となりました。こうした先行きに対する不透明感が高まった結果、製造業の投資方針も「前向きな投資方針」の割合は15年度に比べ低下する業種が多くみられます。
  一方、非製造業は前年度に比べ二桁の増額計画となっており、前向きな投資方針の割合も2年連続で増えています。小売業での新規出店計画や、ホテル旅館業で増加する観光需要を取り込む動きが目立ちます。また、これまで抑制していた老朽化設備などの維持・更新投資に加え、人口減少や人手不足への対応など、事業の省力化や合理化といった前向きな投資も見え始めています

非製造業の景況感が製造業を上回る

   このように製造業と非製造業の投資姿勢の違いが生じた理由の1つに景況感の差が挙げられます。当研究所が県内企業経営者の景況感を把握するため実施している「業況アンケート調査」によれば、14年の景況感(DI)は製造業が非製造業を上回る状況にありましたが、15年に入ると逆転し非製造業が上回っています。その背景としては、国内需要の持ち直しが挙げられます。政府の経済対策による公共工事の増加で建設需要が増加したほか、観光面でも善光寺御開帳やインバウンドなど観光需要の増加も続きました。また、13年以降の円安の進展や海外需要の増加で製造業の県内の設備投資も増加し、非製造業の関連業種にも波及しました。こうした非製造業の景況感の改善が、16年度の設備投資の増加につながっているものと考えられます。 

懸念される製造業の慎重な投資方針の影響

 非製造業の投資マインドは改善していますが、今後の継続性については不透明な点もあります。先行して設備投資が改善してきた製造業では、新興国経済の減速傾向が強まった15年以降、生産面に弱さが目立ち始めています。製造業の弱さが続けば所得の改善は頭打ちとなり内需にもその影響が及ぶため、非製造業の先行きの投資判断にも影響が表れてくる可能性があります。非製造業の投資の継続性を占う上でも、不透明感が増す海外需要の行方や国内における所得の増加などの動きを注視していく必要がありそうです。
 

(初出:2016年6月8日付 南信州新聞「八十二経済指標」)

 

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