先行きへの力強さを欠く長野県経済

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最終更新日: 2016年5月11日

県内主要産業の天気図は横ばい

   当研究所は、四半期ごとに長野県内の業界の景況感を調査するため、県内企業約160社を対象に「産業別四半期見通し調査」を実施しています。今回は4月調査の結果についてご紹介します。
  本調査は、アンケート調査とヒアリング調査をもとに、県内産業の「現況」や「見通し」を天気マークで表しています。「晴れ」は「好調」、「薄日」は「順調」、「曇り」は「普通」、「小雨」は「低調」、「雨」は「不調」としています。
    産業別にみると、製造業は1-3月期の現況、4-6月期の見通しとも、「曇り」とする業種が多くなっています。米国などの自動車向け需要に支えられつつも、設備投資の一巡や中国の景気減速の影響を受け、全般に慎重な見方をする企業が多く、とくにスマホ向け需要が低迷する「電子部品」は「小雨」の状況が続きそうです。
    非製造業では、現況は「曇り」が多い中、「ホテル・旅館」は真田丸や御柱祭、飯田市のお練り祭りに伴う誘客効果にも支えられ、「薄日」となっています。4-6月期は、大型連休の日並びが良く利用者の増加が期待されることから、「ホテル・旅館」と「旅客」が「薄日」の見通しです。
    なお、同時期に行っている調査の「業況判断DI」(業況が「良い」と回答した企業割合と「悪い」と回答した企業割合の差)をみると、全産業で1-3月期の△12.0ポイントから、4-6月期は△19.3%と低下する見通しとなっていて、先行きも力強さが窺われない形となっています。 

懸念要因の多い2016年度見通し

  今年3月に各民間シンクタンクがまとめた2016年度の日本経済見通しによれば、GDP成長率は平均で+1.0%とプラス水準を維持するものの、低成長率にとどまることが予想されています。景気の踊り場状態が続く中、住宅など増税前の駆け込み需要が見込まれる7-9月期以降には緩やかに持ち直すものの、回復力は鈍いものにとどまるとみられます。またIMFが4月に公表した世界経済見通し(暦年)によれば、2016年の世界GDP成長率は1月時点の3.4%から3.2%に下方修正されました。中国の景気減速や長引く原油安、先進国の景気低迷が主な要因であり、日本経済見通しも1月時点の成長率を1.0%から0.5%へと大きく下方修正されています。

内需を支える中長期的成長に寄与する政策を期待

   今後の県内の景況感を占う上で、国内の個人消費や設備投資など内需の動向に加え、米国や中国をはじめとする海外の景気や為替の動向などが注目されます。
   今後、日本経済がすぐに腰折れをするまでには至らないと思いますが、先行きへの慎重な見方をする企業も増えています。従って、先行きの不安感を和らげられるよう、内需を下支えする景気浮揚策が期待されます。
   現在、政府は消費喚起策を含めた景気浮揚策の検討を進めていますが、単なるばら撒きに終わらないよう、規制緩和など中長期的な成長に寄与する具体的な対策により内需をしっかりと支えていくことが求められます
。 

 (初出:2016年5月11日付 南信州新聞「八十二経済指標」)

2016年5月11日

 

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