2015年経済の振り返りと新年の展望~2016年は後半から緩やかな回復へ~

足踏みが続いた日本経済

   今年の日本経済を振り返ると、2014年4月からの消費増税に伴う反動減の影響は和らいだものの、その後の景気回復に向けた勢いは鈍く足踏み状態が続きました。その背景にある大きな要因の1つが、中国をはじめとした新興国経済の減速です。中国は経済成長のスピードよりも構造改革に重点を置いた政策へと転換する中、ソフトランディングができるのか心配する声が広がっています。もう1つが国内需要の伸び悩みです。政府は賃金の引き上げにより個人消費を刺激しようとしましたが、将来の不安が払しょくされない中で、引き上げ分の多くが貯蓄に回ったままとみられます。また、投資減税などの政策による設備投資の増加も期待されましたが、中国などの海外景気の先行きへの不安もあり、後半からはその勢いは後退しました。その結果、日本経済の実質GDPは、4-6月期にはマイナス成長となるなど弱さもみられました。ただ、1年を通してみれば、前年に比べ小幅なプラス成長になるとみられます。さらに、16年は金融緩和や原油安の継続、後半からは17年4月に予定されている消費増税前の駆け込み需要も見込まれ、景気は徐々に回復軌道に戻っていくとみられます。
 

県内も後半から足踏み状態に

   では、県内はどうでしょうか。今年1年を振り返ると、特に前半は観光面を中心に景気の下支え要因に恵まれた年でもありました。3月の北陸新幹線の延伸や7年に1度の善光寺御開帳が4月から5月末まで開催され、多くの観光客で賑わいました。当研究所が四半期ごとに実施している「四半期別業況アンケート調査」でも景況感は1-3月期に上昇し、特に観光業が関連する非製造業では4期ぶりにプラス水準となりました。ただ、こうした要因の剥落や中国の景気後退の強まりを受けた後半以降の景況感は下降に転じました。
   業種別でも、製造業、非製造業ともに前半は改善傾向が続きましたが、後半は足踏み状態となりました。製造業のうち、安定した海外向け需要や国内の設備投資需要のある一般機械など一部業種では収益が改善する一方、国内需要の伸び悩みから多くの企業は収益が低迷したまま、業況感の格差が広がりました。非製造業では、公共・民間工事など高い受注水準を維持した建設業や、観光需要の増加が見込まれたホテル・旅館業で業況感が改善しました。ただ、自動車販売などは増税後の戻りが鈍く、全体の業況感を押し下げました。
 

緩やかな回復の年に

    2016年の長野県経済は、全国同様、緩やかな回復軌道に戻るものと思われます。そうした動きを受けて、県内産業の景況感についても、概ね横ばいからやや上向きの見通しです。業種別にみると製造業では、原油安や円安による収益面の改善のほか、駆け込み需要や新製品への対応などにより底堅く推移するとみられます。また、非製造業では、ホテル・旅館が引き続きインバウンド客の増加に加え、諏訪の御柱祭や大河ドラマ「真田丸」による観光需要の増加が期待され、建設業は住宅の駆け込み需要も見込まれます。
    16年は政府が推し進める「地方創生」に向け、各自治体で作成された総合戦略に基づく具体策が実施される年ですが、地域間で取り組みの成果に差も出てくると思われます。行政のみに任せるだけでなく、将来を見据え地域住民も地域の課題に真剣に向き合うことが重要な年になると思われます。
 

 

2015年12月26日

 

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