先行きに不透明感がみられる長野県経済

県内主要産業の天気図はやや下向き

 当研究所は、四半期ごとに長野県内企業の業況を調査する目的で県内企業約160社を対象に「産業別四半期見通し調査」を実施しています。今回はその調査結果についてご案内します。
本調査はアンケート調査とヒアリング調査をもとに県内産業の「現況」や「見通し」を天気マークで表しています。「晴れ」は「好調」、「薄日」は「順調」、「曇り」は「普通」、「小雨」は「低調」、「雨」は「不調」としています。
 7-9月期の現況は、「薄日」が3業種でしたが、10-12月期の見通しについては「薄日」がゼロとなりました。産業別にみると、製造業で現況が「薄日」は「工作機械」、「電子部品・デバイス」ですが、見通しでは「薄日」の業種は無くなり、いずれの業種も「曇り」を予想しています。7-9月期は自動車やスマートフォン向け部品の需要や国内の設備投資の堅調さに支えられていましたが、10-12月期の見通しでは設備投資の一巡に加え、中国の景気減速の影響を受け慎重な見方をする企業が増加していることが背景にあります。
 非製造業では現況が「薄日」は「ホテル・旅館」のみです。10-12月の見通しは、非製造業でも「薄日」の業種は無くなり、8業種すべてが「曇り」を予想しています。7-9月期の「ホテル・旅館」は、善光寺御開帳伴う誘客効果の剥落による影響が懸念されましたが、想定したよりも宿泊客の落ち込みが小さかったことに加え、夏季需要や9月の大型連休にも支えられ、薄日マークを維持しました。10-12月期の見通しは、「ホテル・旅館」では大型連休の利用の反動に対する懸念から「やや下降」となり、「曇り」の見通しです。

懸念される労働力不足の問題

 今回の調査で今後の景況感を左右する要因として中国の景気減速が注目されていますが、それに加えて大きな問題になっているのが企業の「人手不足問題」です。
 当研究所の調査でもこれまで建設業や運輸業で不足感が特に強い傾向にありましたが、今期はスーパーを含む大型小売店で建設業を上回る状況となりました。これまでは運輸業ではドライバーが、建設業では現場管理者や専門的な資格を有する労働者などの不足を感じている企業が多くみられましたが、今回の調査ではこうした業種に加え、飲食店などのサービス業のほか小売業でも人手不足を訴える企業が増加しています。例えば飲食業では人手不足から夜間の営業に影響が生じていることや小売業でもスーパーのレジ係などの人材が集まりにくく、「これまでの人材募集方法を見直した」という声も聞かれます。
 労働時間の不規則な業務や休日の労働などは敬遠される傾向もあるようです。企業側が求める人材の獲得競争は今後も激しさを増すことが予想され、人材獲得のためのコスト増加は避けられない見通しです。こうした課題が懸念される中、企業も生産性を高めていく取り組みが求められます。

 

(初出:2015年11月6日付 南信州新聞「八十二経済指標」)

2015年11月6日 

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