地域資源の発掘としたたかな観光戦略を

2017年7-9月のデスティネーションキャンペーンが長野県に決定

 長野県が2017年夏(7~9月)の「デスティネーションキャンペーン」(以下DC)の開催地域に選ばれました。これはJRグループと地元の自治体などが連携する誘客事業ですが、全国的なPR活動、旅行商品企画などにより、大きな観光集客効果が期待できます。なお、長野県での開催は2010年秋(10~12月)以来7季ぶり5回目となります。
 

2010年の経済効果は110億円

 長野県での前回開催時の観光地利用者数は4.8%増加し、観光消費額は同4.4%増加しました。当研究所の試算によると、経済効果は110億6千万円と大きなものになっています。こうした経済効果のみならず、地域への大きな恩恵は「地域資源の発掘・再発見」でした。DCに合わせて県内の各地域に眠る観光資源の発掘に取り組み、新たな観光地や特産品などが各地で誕生しています。例えば、TVのCMで放送された長野市の戸隠高原は、パワースポットブームもあって5割近く観光客が増えたのは記憶に新しいところです。
 2017年秋のDCのコンセプトは「山岳高原」です。山岳高原観光地づくりに向けて、事前に地域に眠る資源を発掘し、宣伝方法を練り上げていくことが今から必要でしょう。
 

今年10月からは北陸地域でDCが始まる

 県内ではあまり注目されていませんが、今年10~12月に北陸地域でDCが始まります。北陸地域では、各県単独での開催はありましたが、地域全体での開催は今回が初めての取り組みであり、宣伝にも力が入っています。北陸新幹線の開業から半年余りが過ぎた時期であり、観光客の流れも一服しそうな頃にDCで再び盛り上げようとする、北陸地域のしたたかな観光戦略がうかがえます。
 観光庁から公表された宿泊旅行統計によれば、善光寺御開帳が開催された今年4月、5月の長野県内の宿泊客数は前年同月に比べそれぞれ4月が5.32%、5月が7.28%と一桁の増加にとどまっています。700万人の参拝者が訪れた数字から考えると、宿泊者の伸びにはやや物足りなさも感じます。一方、北陸地域の同時期の宿泊数は、富山県(4月同25.95%増、5月同11.61%増)、石川県(4月16.66%増、5月10.48%増)、福井県(4月5.40%増、5月17.8%増)でいずれも大幅な増加となっています。こうした宿泊者数の伸びからみると、北陸地域には北陸新幹線開通によって大きな経済効果が生まれたことがうかがえます。
 

したたかな観光戦略を期待

 2017年はまだ先の話と思われるかもしれませんが、そんなことはありません。開催に向けた事前準備を早めに進めていくことでその効果も高まっていくと考えられます。開催1年前にはプレイベントも行われるため、早い段階から首都圏などへのPRに加え、西日本から北陸新幹線を利用した新しい長野への観光ルートの売り込みも必要なのではないでしょうか。
 過去に「長野県の方々は宣伝下手だ」と県外の方からご指摘頂いたことがありますが、北陸地域のDCをきっかけに信州にも足を運んでもらえるようなPRを前面に押し出した、したたかな観光戦略も必要なのかもしれません。
 来年以降の大型の観光イベントでは、2016年の諏訪の御柱祭や全国植樹祭があります。こうした大きなイベントを通じて観光客が求めているものを感じ取り、これを地域資源の発掘や今後の観光戦略に活かしていくことが期待されます。
 

(初出:2015年10月7日付 南信州新聞「八十二経済指標」)

2015年10月7日 

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