メリハリ消費を強める消費者

増税後、多くが支出の抑制を続けている

 2014年4月に消費税率が5%から8%へ引き上げられてからまもなく1年半になります。また2017年4月には10%への再増税が控えています。増税直後は駆け込み需要の反動などから大きく落ち込みました。県内も同様に大型小売店の販売や乗用車販売などが大きく減少し、その後も支出の抑制傾向が続いています。
 そこで、当研究所が6月に行った消費動向調査の中から、消費増税以降の消費意識についての調査結果をご案内します。
 

増税直後に6割以上の消費者が支出を抑制

 増税以降、消費に対する意識はどのように推移してきたのでしょうか。まず14年4月の消費増税直後の消費行動を尋ねると、「抑制した」という回答は63.1%となりました。
 また、この支出を抑制した6割の消費者に対し、いつ頃まで支出を抑制していたのかを尋ねると、「現在でも支出を抑制している」と回答した人が61.4%に上り、増税から1年以上経っても多くの消費者が支出の抑制姿勢を継続していることが分かります。現在でも支出を抑制している理由としては、「物価が上昇しているため」が67.9%と最も多く、次いで「収入に変化がない・減少したため」(67.0%)となっています。物価の上昇が続く中、収入の増加が追い付いていないことが、支出の抑制につながっていると考えられます。
 

生活の質を充実させるための「メリハリ消費」

 では、こうした消費者の多くは支出に対して抑制一辺倒なのでしょうか。普段から節約するものとお金をかけるものを自分の中で分けているかどうか、いわゆる「メリハリ」消費について尋ねると、メリハリをつけているとする割合は80.1%となり、多くの消費者が消費を抑える中でも必要と考えるものについては支出増もいとわないというスタンスをとっていることがわかります。
 それでは具体的に何を節約し、何の支出を増やそうとしているのでしょうか。まず、節約しているもので多いのは「外食」(36.1%)、「衣類・履物」(34.5%)、「光熱費」(27.2%)となりました。また、今後節約したいものではこれらのものに加え、「通信費」や「保険」の割合が大幅に増えており、今後見直そうとの意識が強いことがうかがえます。
 一方、前向きに支出を増やしたいものでは、「旅行」(39.6%)、「趣味・イベント」(27.7%)、「住宅・リフォーム」(18.7%)が上位に挙がっています。生活の基礎的な支出を抑制しながらも、自分や家族の生活の質を充実させるための消費を増やそうとする姿勢がうかがえます。
 

10%への増税は今回以上に負担感が大きい

 今後の消費行動に影響を及ぼす要因としては、「今後の物価変動」の割合が66.2%と最も高く、次いで、「収入の変動(世帯・個人)」(56.5%)となっており、物価動向や収入が今後の消費に大きな影響を及ぼすことが分かります。また、17年4月に消費税率が8%から10%へ引き上げられることの影響について、14年4月の8%への引き上げ時との比較を尋ねると、「消費税率8%から10%への引き上げの方の負担感が大きい」という回答割合が64.5%となりました。
 今後は食料品など物価の高止まり予想の中、緩やかな賃金上昇、更には再増税も見据えると、支出全体を抑制しようとする傾向はこれからも継続するとみられます。ただ、支出に対しては抑制一辺倒ではなく、自分や家族の生活の質を充実させる消費に対しては、前向きな「メリハリ消費」の傾向がより強まっていくものと考えられます。
 

(初出:2015年9月9日付 南信州新聞「八十二経済指標」)

2015年9月9日 

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