多様化する消費者の買い物行動

ネットによる購入が増加

 インターネットを通じて商品を購入する割合が長野県内でも増えています。長野経済研究所が1月に実施した消費動向調査によれば、インターネット販売の利用経験者は全体の7割を超え、多くの消費者が利用していることが分かります。特に最近ではSNSなどの普及により、情報をうまく利用する消費者が増加し、購買行動も多様化してきています。
 そのような行動の一つが「ショールーミング」と呼ばれるものです。これは「店舗で商品の現物を確認し、購入はネットで行う」といった消費行動です。消費者はあの手この手で良いものをより安く購入したいと考えます。
 

「ショールーミング」経験は4割強

 「ショールーミング」の明確な定義はありませんが、このような行動の有無について尋ねると、「経験したことがある」と回答した消費者は全体で47.7%と半数近くに上ります。年齢別では、20~40代では6割を超え、若い世代を中心にショールーミングは主要な買い物方法の一つになりつつあることがうかがえます。
 ショールーミングをして実際に購入したことがある品目については、「家電・AV機器・情報家電」が61.9%と最も高く、次いで「衣料品・ファッション」が35.9%、「書籍・CD・DVD等」が35.2%となっています。このような行動をとる消費者の多くは、店舗で商品を確認した後、あるいは事前にネットを通じて価格をはじめ、商品情報や口コミ・評判、アフターサービスに至るさまざまな情報を検討しており、これらを判断材料として購入の可否や購入先を決定しているようです。
 

求められる店頭での提案力

 ただ、このような消費行動の結果、多くがインターネット販売に流れているのかといえば、決してそうではありません。利用経験のトップにあった家電製品について、日ごろの購入方法を尋ねると、「店舗での購入」は66.5%と6割を超えますが、「店舗とネットを使い分ける」は33.5%にとどまっており、引き続き店舗(店頭)の役割が大きいことが分かります。また、店舗で購入する理由として、家電や衣料品では「実際に商品をみたい」、「すぐに手に入る」といった回答が上位となっており、店舗ならではの強みといえます。
 加えて、店側は来店した顧客へ個別に直接商品の説明・提案ができます。ちなみにショールーミングをする消費者が購入時に店員に期待することでは、「自分でも気付かないニーズをくみ取った商品提案」、「希望を聞き、いくつかの選択肢の提案」、「商品の選び方や視点」の回答が上位を占めます。店側にとって、消費者ニーズにかなった提案力を強化することは、広がりつつあるショールーミングへの対応として重要といえそうです。
 

店舗に求められる顧客との信頼関係の構築

 今後、インターネットを通じた消費が急拡大していくと、地域に落ちるお金が徐々に減っていくことも懸念されます。地域経済は地域の外から稼ぎ、そのお金を地域内で回すことで成長していきます。ショールーミングに代表されるインターネットを通じた購入が増えると、地域に落ちるはずのお金が外に漏れ出てしまいます。そうした動きが拡大してしまうと、これまで身近であった店舗の存続にも影響を及ぼしかねず、店頭ならではの強みとして消費者から支持されている「すぐ手に入る」という機能なども失われてしまいます。
 消費者の多くは、引き続き店舗での情報も重要視しており、実際に店舗を訪れています。質の高い対応で、顧客との信頼関係を着実に築き上げていくことが、店舗からの顧客離れの対応策の第一歩になるのではないでしょうか。
 

(初出:2015年7月8日付 南信州新聞「八十二経済指標」)。

2015年7月8日 

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