注目される新指標「専門量販店販売統計調査」

家電販売店、ドラッグストア、ホームセンターの売り上げが把握可能に

 賃上げの動きが徐々に地方でもみられるようになる中、今後は所得の増加を通じた個人消費の動向に注目が集まっています。消費関連の統計データにはさまざまなものがありますが、地域の消費動向をみるうえでは活用できる統計は限られています。
 現状、長野経済研究所では個人消費の動向を探るために、需要、供給両面からデータを追っています。需要面、すなわち消費者側から見たものは、総務省の「家計調査」や当研究所独自の「消費動向調査」などがあり、一方、供給面、すなわち店舗側から見たものでは、自動車販売や当研究所独自の大型小売店の売上高動向調査などがあります。しかしながらこうしたデータだけで消費動向を語るには限界があるのも事実です。
 こうした中、国では都道府県別の消費関連統計を充実させるため、「専門量販店販売統計調査」を14年2月から公表しています。これまで消費関連で都道府県別に公表されていた月次統計は百貨店やスーパーなどの大型小売店のみでしたが、新たに「家電量販店」や「ドラッグストア」、「ホームセンター」が加わりました。これら3業種の長野県内の2014年の年間販売額は2,242億円に上り、百貨店やスーパーを合わせた大型小売店販売額に匹敵する規模になります。サンプル調査のため、すべての店舗の販売額ではありませんが、調査対象先にこれまで把握が難しかった県外資本など大規模店舗も含まれることから、供給面から消費動向を見る上で大変重要なデータといえます。

駆け込み需要の反動の大きさを再確認

 新たに公表された統計の県内販売規模をみると、「家電量販店」の2014年の年間販売額(暦年)は538億円(年度483億円)、「ドラッグストア」721億円(同707億円)、「ホームセンター」983億円(年度957億円)となっています。暦年と年度の金額の差の多くは14年4月の消費増税に伴う駆け込み需要が影響していると考えられます。参考までに今年3月の1店舗あたりの販売額を前年と比べてみると、いずれの業態も二桁を超える減少となりました。この中でも「家電量販店」は40%を超える大幅な落ち込みとなっており、いかに大きな駆け込み需要が前年に発生していたのかがわかります。家電量販店は高額な商品の取り扱いが多いことから、駆け込み前の購入が進んだことが再確認できます。 
 このほか全国シェアや1店舗あたりの販売額を業種別にみると、長野県は「ホームセンター」のシェアが高く、販売額も全国を上回るなどの特徴がみられます。このように、これまで把握が難しかった個人消費の細かな動きが、こうした新たな統計から確認できるようになりました。
 

さらに注目されるコンビニ統計

 このような専門量販店統計に加え、今後はより身近な店舗であるコンビニエンスストア(以下コンビニ)が都道府県別の月次データとして新たに加わる予定です。コンビニは近年、長野県内で店舗数の増加がみられるなど、その動向が注目されています。宅配などのサービスを手掛ける店もあり、地域社会を支えるインフラとしての存在感を増すコンビニの動向は、地域経済を把握するうえで非常に重要な指標になりそうです。このほかにも、今後さらに進むと予想されるネット経由の販売動向を把握できる統計の整備などが求められてくるでしょう。
現在、地方創生の取り組みが進められていますが、市町村別の消費動向をタイムリーに捉え、政策に活かすためにも、将来的にはこうした地域でも活用できるデータの整備が期待されるところです。
 

(初出:2015年6月10日付 南信州新聞「八十二経済指標」)。

2015年6月10日 

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