増加傾向にある地方への訪日旅行者

年間の黒字が視野に入った旅行収支

 訪日旅行者の増加が顕著になり、最近では県内でも訪日旅行者を目にするようになりました。とりわけ東京では中国人旅行者の増加が著しく、中国の春節で訪れた際の買物振りに「爆買い」と呼ばれる言葉も生まれたほどです。
 統計面から日本の旅行収支の状況をみてもこうした変化が実感できます。日本人旅行者が海外で使うお金と訪日客が日本で使うお金とを比べ、後者が上回れば収支は黒字となります。これまで日本人の多くが海外へ旅行し消費する一方で、海外から日本を訪れる旅行者は少なかったため、日本の年間の旅行収支は赤字というのが恒常的でした。それが今では訪日旅行者の増加で収支の赤字幅が縮小し、今年は黒字転換も期待できる見通しになってきました。
 

地方への訪日旅行者増加の動き

 こうした訪日旅行者の増加は徐々に地方にも波及してきているようです。先月、仕事の関係で静岡大学を訪れた際、静岡県内でも訪日旅行者の増加を実感しているというお話を伺いました。実際に静岡空港の国際線の利用者数も増加しており、特に中国からの旅行者の増加が顕著ということです。また、これまでの中国からの旅行者は「団体客」が多いというイメージでしたが、最近になって「個人客」も増え始めているようです。ゴールデンルートとして東京や大阪を訪問し、ピンポイントで富士山だけを訪れていた旅行者が、最近では静岡県内の周辺の地域にも足を運ぶようになってきているようです。こうした旅行者の増加は、地方での消費増加にもつながることが期待されます。
 

求められる免税店の増加や地場産品の情報提供

 旅行者による消費増加は円安の影響が大きいですが、免税対象品目の拡大効果も大きいとみられます。これは昨年の10月から免税の対象となる商品の範囲を、家電やカバンなどの耐久消費財から化粧品や食料品などの一般消費財にまで拡大したことによるものです。そのため免税品を取り扱う免税店の設置も地方での消費増加には欠かせません。国税庁の集計によると、静岡県内の免税店数は161店舗(14年10月1日時点)と全国11位で、長野県88店舗(15位)を大きく上回っています。
 静岡県の名産といえば、お茶が有名ですが、最近まで消費の低迷が続いていました。こうした中、地域への訪日客の増加に合わせ、土産物としてお茶のブランド力を高めるとともに、免税店での販売の強化にも取り組み始めています。
 東京や大阪を結ぶゴールデンルートへの旅行が一巡し、個人旅行者が周辺の地方にも足を運ぶようになってきました。長野県の地場産品を訪日旅行者に売るチャンスが訪れています。長野県でも増加する訪日旅行者の消費パワーを取り込むために、免税店の増加や地場産品に関する情報提供などの対応が今後一層求められてくるでしょう。
 

(初出:2015年5月13日付 南信州新聞「八十二経済指標」)。

2015年5月13日 

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