外貨を稼げる次世代産業の育成を急げ(2011.10.16)
10月に入り、厳しかった残暑の記憶も薄らぎ、ネクタイにスーツ姿と町の風景も一変した。心配された夏の電力不足も省エネ努力の結果、なんとか乗り切った。われわれの生活には、まずもって電力が必要なことをあらためて思い知らされた夏であった。
しかし、問題はこれからだ。原発の定期点検後、従来通りの稼働は難しいとみる向きは多い。となれば代わりとなる電力源が必要となる。8月に再生エネルギー法が成立し、自然エネルギーの普及が期待されるが、早急に原発に代わるとは考え難い。現実的には、火力発電がその穴埋めをするしかない。その稼働のためには天然ガスや石油を大量に輸入しなくてはならず、近い将来、日本の経常収支は赤字に転落していくことが予測される。いつか来た道ではないが、外貨を稼がないことにはエネルギー費用がまかなえず、日常生活に事欠く可能性さえ現実味を帯びてくるだろう。
そのため、外貨を稼ぐ輸出産業を今まで以上に盤石なものとしていくことが必要だ。
ところが、その輸出産業は、現状、高い法人税や厳しい環境規制などに超円高、電力不足が加わった多重苦の中にある。県内でも、従来考えられなかったような企業が海外進出の検討を始めている。必要不可欠な部分が逆に剥ぎ取られるような状況になっている。
大前提として求めておきたいのが、国によるこれらの足かせを緩和する政策だ。同時に県内においても、外貨を稼げる次世代産業の育成を急がなくてはならない。もとより県内企業が戦う既存市場は新興国に侵食されており、次代を担う産業が問われている。急先鋒としては、世界的にニーズが急増している新エネルギー、医療、次世代自動車などへの参入を図っていくべきだろう。目指すものは、高齢化やエネルギーによる制約を受けない、逆にそれらをチャンスに変え成長する長野県産業への転換だ。
「世の中の困り事が多い時こそ、それを解決するための事業機会は増えるもの」先日とある社長が頬を紅潮させながら語ってくれた。
(初出)信濃毎日新聞2011年10月16日朝刊「提言直言」『外貨を稼げる次世代産業の育成を急げ』
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