長野県の教育投資について

大学等への進学者数のうち6割が東京圏へ

 新入学シーズンを迎え、お子さんの進学資金などを心配される方も多いと思います。
文部科学省の学校基本調査(平成21年5月時点)の出身高校所在地県別の大学等入学者数データをみると、長野県内から県外の大学や短大へ入学した学生数は、8,669人(大学7,928人、短大741人)となっています。
 こうした県外への進学には、多額の費用が必要となります。特に家賃等の物価が高い東京圏(東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県)は、5,215人と県外全体の約6割を占めています。こうした状況のもとで、ほとんどの学生は1人暮らしを余儀なくされ、家計への費用負担も大きなものになっています。 

進学に伴う長野県の所得収支は、大幅な流出超

 日本学生支援機構の調査(平成20年度)によると、大学生(昼間部)で「下宿、アパート」に居住した場合の支出額は、全国平均で年間約216万円(学費111万円、生活費105万円)となっています。所得が低迷する中、家計にとって極めて大きな負担であることがうかがえます。
 同時にこれは長野県経済全体でも大きな所得の流出となります。仮に大学生を持つ親がこうした費用をすべて仕送りにより負担したと仮定し簡略に計算しても、県全体の流出額は、年間で約700億円と大変大きな金額になります。これは長野県の名目GDP(2007年度)に換算すれば、全体の0.8%にも及びます。
 GDP成長率が1%を維持できるかどうかといった現状の厳しい景気の環境下で、GDPの0.8%を生み出すことは至難の業といえます。長野県は毎年こうした多くの所得が県外へ流出していることになります。
 一方で信州大学など県内への流入に伴うプラスの効果も考えられますが、長野県は県外への流出者数の方が大幅に上回っている状況です。大学への進学を例にとってみると、都道府県別の純流出入者数(「流入者数」(県内への進学者数)―「流出者数」(県外への進学者数))を試算すると、長野県は6,179人の流出超(平成21年5月時点)で、静岡、茨城に次いで全国で3番目に流出者数の多い県となっています。

将来の長野県経済を支える人材確保のために

 県外にこうした人やお金が流出してしまえば、県内経済への寄与という点から考えると短期的には好ましい状況にあるとは言えません。ただ教育への投資は広い意味で将来への長期投資と捉えることもできます。高度な教育を受けた学生が一人でも多く長野県に戻り、将来的には地域を支える人材となることも忘れてはなりません。
 そのためにも人材の受け皿づくりが重要であり、具体的には受け皿となる地域の企業を支援し、育てていくことが重要です。地域の目指す方向に向けて、魅力ある企業とそれを支える人材を確保し育成していくことが地域活性化には欠かせぬ視点と言えるでしょう。

2010年4月13日

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