身近な足元の課題に五感を働かす

高齢化が進む長野県

 昨年12月に国立社会保障・人口問題研究所から「市町村別将来推計人口」が発表されました。この人口予測によりますと長野県の人口は2005年の219万6414人から、30年後の2035年には42万人減り、177万人にまで減少すると予測しています。
 また、人口減少に加えまして高齢化も深刻です。65歳以上の人口の割合は、2005年の23.8%から2035年には35.6%となり、3人に1人が65歳以上になります。その結果、65歳以上の方が4割以上を占める自治体の数は、2005年には8町村だったのが、30年後の2035年には38市町村と4倍以上も増加するそうです。今後、様々な面で高齢化への対応が必要になってきます。

ユニバーサルデザインという考え方

 年を取ると視力が落ちたり、足が悪くなったりなど、身体的な機能が低下します。実際に高齢者の増加によって、こうした「困ったな」と思う部分を補うような様々なニーズも生まれています。
 このような中、世界的にユニバーサルデザインという設計思想が提唱されました。この名前を既に聞いたことのある方も多いと思いますが、このユニバーサルデザインとは、「すべての人が可能な限り利用できる」ことを目指して努力し続けるという設計の姿勢です。具体的には幼児から高齢者までのあらゆる年代層や様々な身体に障害をお持ちの方でも利用することが可能な設計を目指すというものです。 高齢化が進む中、こうした考え方が広がり、既に多くの企業の商品設計に取り入れられています。

ニーズを捉えた商品の開発のために

 最近では、ユニバーサルデザインの商品もかなり増えてきています。
例えば、「黒いまな板」という商品です。この商品は、白内障や色弱などの目に障害のある方が、白い食材などを切る場合、見えにくいため勘を頼りに切ることで「指をけがしてしまう恐れがある」ということから生まれた商品です。
 イメージ的に「白」が主流のまな板ですが、「黒くする」ことで同系色の食材をくっきり見分けることができるというものです。ニッチな商品と思われますが高齢者をはじめデザイン的に若者にも受け10万枚以上も売り上げているそうです。この商品は困っている方とのコミュニケーションの中から生まれたそうです。
 やはり、いかに「使いにくい」という方の意見を聞く機会を作り、その現場で見て、感じて、触れて、その立場に立ち、気づけるか、ということがこうしたヒット商品を生むきっかけになるのだと思います。

今後、高齢化は日本以外の国でも進む

 高齢化のニーズは今後も増えると思います。そして、こうした高齢化の波は日本だけの問題ではありません。日本以外の先進国をはじめ今後成長著しいアジアの国(韓国、シンガポール、中国など)も高齢化が進む見通しです。今後、豊かになる一方で高齢化に向かうアジアなどの市場を展望すれば、高齢化の先進国である日本国内のユニバーサルデザインの商品がグローバルニッチ商品として変貌する可能性も秘めています。
 現在は厳しい状況ではありますが、このような時こそ原点に立ち返り、「五感」を働かせ、しっかりと足元の課題に向き合っていきたいものです。

2009年1月13日

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