最近の景気減速と設備投資動向について

さらに強まる景気の減速感

 2002年2月以降、約6年近くにわたり日本経済は景気回復が続いてきましたがアメリカに端を発する金融市場の動揺が世界経済に及び始めています。日本経済にも輸出の減少、為替の円高、株価下落などにより企業の業績にも悪影響が広がっています。
輸出が減少しているため、もう一方の個人消費など内需拡大による景気の下支えが必要ですが、所得の伸び悩みに加え、年金問題に伴う将来不安の増加、食品価格の上昇などから節約志向が高まっており、消費意欲の増加に結びついていない状況です。そして節約志向は今後もしばらく続くものと思われ、内需拡大も厳しい状況です。

こうした中、政府が追加の経済対策を発表

 最大の目玉は総額2兆円規模の「給付金」で、全世帯が対象です。内需拡大の効果が期待できますが2兆円の給付金でも国内総生産を0.1%程度押し上げるという見通しもあり、効果はやや不透明のようです。
 このほか「高速道路料金の引き下げ」が盛り込まれています。長野県は観光県ですので高速道路料金の引き下げで大都市圏からの誘客を期待したいところです。来年は7年に一度の善光寺ご開帳があり、料金の引き下げを機に長野を訪れる方のさらなる増加も期待されます。
また最近では高速道路料金と宿泊などがセットになった旅行商品が発売され好評のようです。県内でもぜひこうした商品の開発に努めてもらえればと思います。
追加経済対策では、このほか内需のもう一つの柱である設備投資についても、成長力強化対策として時限的に即時償却を可能とする省エネ・新エネ投資の促進が盛り込まれています。環境への対処がそのまま企業競争力につながる今日では、こうした投資は不可欠といえます。

輸出と共に景気を下支えしてきた設備投資の現在の状況

 10月に発表された日本銀行の短観によると、全国の大企業製造業の2008年度の設備投資は、前年度に比べ5.6%の増加となっています。ただ足下では、景気の先行きに対する不透明感が増し、大企業の中でも計画を大幅に見直す動きもみられます。
当研究所でも長野県企業の設備投資動向についてアンケート調査を行い、約330社から回答を得ました。今年度(2008年度)は、景気悪化の影響で需要も急激に冷え込んできているため前年度に比べ大幅な減少となる見込みです。また、2008年度の当初計画からの修正状況では、全体で約4割の企業が当初の計画よりも減額する見込みとなっています。
ただ、こうした中でも投資を継続的に行う企業もあります。例えば、全国の大手企業の中には、成長する環境市場向けに国際競争力を維持するため工場の増設や生産能力の増強を図る動きもみられます。県内でも環境、エネルギー分野など中長期的に需要増加が見込める市場への投資がみられます。
こうした企業の成長をさらに後押しできるような対策を追加経済対策の中にもっと盛り込み強力に推し進めてもよかったのでははないでしょうか。
景気の回復にはまだしばらく時間がかかるものと思われますが、このように今後の先行きの成長分野を睨んだ投資が数多く出てくれば、景気にも多少なりとも明るさが見え始めるきっかけになるかもしれません。

 これまで着手できなかった成長分野をリサーチし、しっかりと見極めたうえで、今こそ次の景気回復時に対応できるよう準備する時期なのではないでしょうか。

2008年11月4日

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