拡がる食の安全性への不安

拡がる食品の安全性への不安

 最近、中国で製造された食品の中に農薬で使用される有害物質を含まれていました。そして、それを食べた多くの方が健康被害を引き起こしました。この商品は、小売のみならず業務用としても広く販売されており、取り扱っている業者では自主回収を行なうなど対策をとりましたが、消費者への不安はひろがったままです。
 こうした食品を日本へ輸入するためには事前に国へ届出が必要になりますが、因みに2006年に輸入の届出のあった食品の件数は約186万件にも上っており、この10年で1.5倍にも増加しています。ただ、検査が実施されるのは、このうちの約1割(10.7%)にあたる20万件弱に過ぎません。輸入される食品の件数も多く、検査にも限界があるとはいえ、検査のあり方にも疑問が感じられます。
 このような背景を受けてか、長野経済研究所が最近行なった県内の消費者アンケート調査で、「食に対する安全をどのように感じているか」を尋ねたところ、約8割以上の方が食の安全に不安を感じていることがわかりました。
 

消費者の対応策

 アンケート調査の中でも、「何に注意をして食品を購入するのか」を尋ねたところ、最も多かったのが消費期限などの「期限表示」(約6割)、そして今回の「生産地」についても半数の方が購入の際に注意をしているようです。消費者の中には、価格の安さだけでなく商品自身の信頼性にもかなり注意を払っていることがうかがえます。ただ、最近の食の安全に関する様々な事件を考えると、消費者側だけの注意だけでは解決できないことが多くなっています。
 

期待される政府や企業側のさらなる対応

 近年、食の世界では様々な地域から様々な商品を購入できるようになりました。一方で流通経路も複雑かつ他段階となることでリスクも増加しています。先ほどのアンケート調査で「安全確保のために企業に行って欲しいこと」を尋ねたところ、何を使っているのかといった「使用原材料の内容」や何かあったときへの対応といった「品質責任の強化」を求める回答割合が最も高くなっています。そのため国際的な食の統一基準等も必要になってきていると思います。
 企業側も食品に危険がないことを十分消費者に伝えることが求められますが、世界各国から食品の輸入も進む中、各国の安全性の基準がバラバラでは、我々の食への安全に対する保障も難しく、企業単体では対応にも限界があることも事実ではないかと思います。
 我が国では、食料自給率が4割を切り、食料の多くを海外からの輸入に依存しています。輸入食品は今後も増えることが予想され、輸入食品なしでは日々の食卓は成り立たないというのが現実です。安く、便利な商品を手軽に購入できるメリットも大きいですが、同時に様々なみえないリスクもどんどん増えてきていると思います。安全・安心なのはやはり地元の食材を多くとりいれることだと思いますが、こうした事件をきっかけにもう一度我が国の自給率の向上への取り組みを考えてみる良い機会なのではないでしょうか。

(2008年1月12日)

関連リンク

このページに関するお問い合わせ

産業調査

電話番号:026-224-0501

FAX番号:026-224-6233