県内で動き出した地産地消エネルギープロジェクト by信濃町(2007.10.16)
問題含みのバイオ燃料ブーム
ここ数年の中東情勢の混乱でエネルギーの安定供給が差し迫った問題となったことなどから、米国政府がエタノールの利用推進を掲げ、バイオ燃料ブームに火がついている。
現在バイオエタノール燃料の多くはトウモロコシやサトウキビから生産されているため、それらの増産が進み、結果として他の穀物からの転作が進み、世界的な穀物価格の高騰を招いている。
これは同時に食料を燃料にしているという点で道義的に批難されてもおり、問題含みの展開だ。
望ましい姿は食用以外の利用
望ましいバイオ燃料の姿は、バイオエタノールで考えると食料との競合を避けるという観点から食用以外の植物や間伐材等の未利用資源などから生産されることでしょう。
しかし解決すべき課題も多い。それは技術面とコスト面。バイオエタノールは基本的に糖があれば生産できる。そのため、食用以外の植物などからエタノールを生産するためには、糖の分子が鎖状に連なった丈夫なセルロースという繊維を糖にしなくてはならない訳だが、その技術が現在は非常にコスト高。また、原料のモミやワラや間伐材などは広くに薄く存在しており、それらを集めることも非常にコストがかかる。
このような課題に対処するひとつの答えは、各地域に分散したの地産地消のシステムを作ること。
地産地消エネルギーへの取り組み
こうした中、東京大学大学院の五十嵐先生と松本市の(株)総合環境研究所の研究グループによる地域完結型の地燃料システムの構築と運営という実証実験が信濃町で始まっている。これは内閣府のバイオ燃料推進のための事業に全国から10件の応募の中で1件採択されたもの。
何をするのかというと、バイオマスは安く原料を集めて、安く生産して、廃棄物の利用も考えていかないと実際に使えないため、こうした一連の流れの一貫したシステムを作っていくことが兎にも角にも必要となるので、そのための研究をしようとするもの。
そこで当プロジェクトでは、比較的地域に多く存在するわら、モミ殻、りんごの剪定枝や間伐材、それから休耕田を利用した工業米などからバイオエタノールを生産する技術開発を行ったり、地域内のバイオマスの収集から生産、流通までの地域完結型システムを構築していくというもの。
既に信濃町にはセルロースを糖に発酵させたり、蒸留したりする設備が入った研究棟が稼動しており、バイオマスの生産を始め、より効率的な収集運搬、流通などの研究が始まっている。
今後のバイオエタノールをうらなうと
今後は、信濃町のプロジェクトのように原料の近くで生産して使うという地産地消型のシステムが有効になると考えられる。これは地域でエネルギーが生産されるという意味だけではなく、工業米など資源作物の栽培によって、現在使われていない田や畑や山林も生き返ることとなり、二重の意味で二酸化炭素の削減効果が期待でき、さらに雇用の増大や地域振興なども期待できる。
このように、各地域の限られた廃棄資源や休耕地をどうバイオ燃料に活用するかということは、地球温暖化対策は勿論、地域振興という視点から地域にとって重要な課題なのかもしれない。
(2007.10.16)
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