物価上昇による悪影響は長野県内で拡大<2022.10.11>
急激に上昇する輸入物価
エネルギー、食料、金属などの一次産品価格の上昇と24年ぶりの水準まで進展した円安により、輸入物価が上昇しています(図表1)。
輸入物価の上昇は、川上の企業物価から川下の消費者物価まで広く及んでいます。日本国内の企業間の取引価格である国内企業物価指数は115.1(8月)まで上昇したほか、全国の消費者物価指数(総合)は102.3(7月)となり、いずれも2000年以降で最高水準となっています。こうした物価の上昇を、県内の企業、消費者がどのように捉えているのか、当研究所のアンケート結果を中心にみてみました。
図表1 輸入物価指数、国内企業物価指数、消費者物価指数の推移
長野県内企業 マイナスの影響は8割超
まず、企業への影響を22年4月と7月に実施した「最近の経済環境の変化に関する調査」でみると、原材料価格変動による企業業績への影響については、7月調査は「マイナスの影響がある(「マイナスの影響がある」+「ややマイナスの影響がある」の合計)」の回答割合は、83.5%となり、4月調査の77.0%に比べ16.5ポイント増加しました。
この背景にあるのが、販売価格への転嫁の遅れです。図表2で、販売価格への転嫁状況をみると、「価格転嫁できていない」が21.4%、「5割以下」が34.0%となっています。半数以上の企業は価格転嫁が5割以下にとどまっており、企業収益を押し下げていることがうかがえます。
図表2 販売価格への転嫁状況
長野県内消費者 今後、消費行動は抑制色が強まる
続いて、消費者サイドから足元の物価上昇の影響について、当研究所で実施している消費動向調査(22年4月・7月調査)の結果からみてみましょう。
7月調査で県内在住の1,000世帯に、物やサービスの価格に対する意識を尋ねたところ、食料品、ガソリン、水道光熱費等の生活必需品を中心に約9割の世帯が物価の上昇を感じていると回答しました。
物価が上昇しても、収入が同程度増加していれば購買力に変化はありません。ただ、図表3(内円)で収入の現在の状況をみると、「変化なし」が61.9%と最も多く、「減少した」が28.6%となった一方、「増加」は9.5%にとどまりました。また、図表3(外円)で収入の見通しをみると、「変わらない見通し」が58.9%、「減少する見通し」が36.3%となっており、家計の購買力は足元、先行きともに弱い状況です。
今後の消費行動を尋ねると、「抑制的になる(「抑制的になる」+「やや抑制的になる」)が30.6%と、4月調査に比べ19.7ポイント増加し、抑制色が強まる結果となりました。
今後、販売価格への転嫁が進展し企業が利益を確保できるのかという点と、賃上げの実施により消費者の購買力が維持・向上できるのかという点に注視していく必要があります。
図表3 収入の状況と見通し
*詳細は経済月報10月号トピックス「川上から川下まで広がる物価上昇」で公表しておりますので、ぜひご覧ください。
(2022.10.11)