新たなチャイナ・プラスワンの動きを強める県内企業の海外ビジネス

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最終更新日: 2019年10月11日

 

変化する海外ビジネス環境

 2016年の米トランプ大統領就任や、英国のEU離脱表明以降、保護主義の動きが強まっており、世界の自由貿易体制は揺らいでいます。特に米中貿易摩擦による制裁関税の応酬は両国間の貿易のみならず世界経済にも大きな影響を及ぼしています。
 こうした環境変化の中、県内企業にアンケート調査を実施し、県内企業の海外ビジネスの現状と今後の方向性について探りました。  

輸出、海外進出ともに中国を重視する姿勢は変わらず

 まず、輸出の有無を尋ねたところ、いずれかの国・地域に輸出があると回答した企業割合は31.5%で、輸出先は中国が57.7%と最も多くなり、「今後輸出の開始・増加を検討している国」も中国が1位となりました(図表1)。ただ、「今後輸出の減少が予想される国」も中国が1位となっています。
 続いて海外拠点の有無を尋ねると、いずれかの国・地域に拠点があると回答した企業割合は17.2%で、「海外拠点拡大にあたり今後重視する国」は、図表2のとおり、中国が最も多く、次いでベトナム、タイの順となりました。
 ベトナムとタイの拠点拡大の理由を図表3にみると、「市場に成長性がある」、「現地顧客からの引き合い」、「市場規模が大きい」が多い一方、「人件費が安い」は少ない結果となりました。
 これは、中国のみへの集中を回避することやコスト削減を目的としたこれまでのチャイナ・プラスワンとは異なり、東南アジアの安い労働力よりも市場としての価値に着目して拠点を構える「新たなチャイナ・プラスワン」の動きと捉えることもできます。

図表1 輸出の開始・増加を検討している国・地域と輸出の減少が予想される国・地域

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図表2 拠点拡大のために今後重視する国・地域

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図表3 拠点拡大のために重視する国を選択した理由

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新たなチャイナ・プラスワンの動き

 中国は、今後も成長が見込める巨大な市場として、県内企業が輸出先・海外拠点ともに中心に据える状況に変化はありませんでした。しかしながら、人件費の高騰や人手不足の進行など、中国の生産拠点としての魅力が薄れつつあるのも事実です。このため、大手メーカーを中心に中国から東南アジアに生産の軸足を移し、新たなサプライチェーンを構築する動きもみられます。こうした動きに県内企業も対応が求められる可能性は高いでしょう。
 今後、保護主義の動きがますます強まり、海外ビジネス環境が一層変化することも考えられます。県内企業の海外ビジネスは、中国を重視する姿勢を保ちつつ、市場としての魅力を高めているベトナムやタイといった東南アジアへも輸出や海外進出を広げる新たなチャイナ・プラスワンの動きを強めていくことでしょう。

 *詳細は、経済月報10月号の「新たなチャイナ・プラスワンの動きを強める県内企業の海外ビジネス」に掲載しておりますので、ご覧ください。

(2019.10.11)

 

 

 

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