テレワークで地域を元気に!立科町の取り組み<2021・05・14>
自然豊かな立科町の両角正芳 町長をおうかがいして
蓼科山とそれに連なる女神湖、白樺湖、蓼科牧場を有する立科町は、一大リゾート地で有名だ。
産業面ではこれら観光業のほか、稲作を中心に立科ブランドのりんご、高原野菜、畜産など農業も盛んだ。
両角正芳町長に、地域を元気にするテレワークへの取り組みをうかがった。
立科町のテレワークの取り組み~町の女性、高齢者、障がい者の就労の受け皿
コロナ禍でテレワークを進める企業は多い。
また、県内の自治体では都会の密を避け、快適な労働環境を提供するワーケーションの取り組みも盛んになっている。
立科町では、塩尻市と連携しながらICTを活用し、テレワーク、ワーケーション双方の取り組みを進めてきた。
同町には、「芦田宿」という中山道の歴史などを紹介するために建てられた「ふるさと交流館」があるが、ここにテレワークセンターを構え、通信ネットワークとセキュリティ対策を施したワークスペースを作った。
ここで子育てや介護中の女性を中心に高齢者、障がい者50名ほどが、それぞれの都合のつく時間に、町や公社、県内外の企業から受託した仕事を行っている。
具体的な仕事の内容は、会議録や宛名の作成、名簿のデータ入力など簡単なインプット業務にはじまり、Webサイト制作や広報誌の編集・デザイン、営業資料の整備から発送、電話営業な多様な仕事を行っている。
これらを主婦や高齢者がこなしていくためには、パソコン操作をはじめ業務内容に応じたスキルが必須となる。
そのため、「office基礎」、「デザイン・編集技術」、「営業スキル」などの研修を実施している。
昨年はWebサイトの制作能力を高めるため、専門家による実践指導なども取り入れてきた。
さらに、同年は「営業チーム」を発足させ、企業からの受注体制も強化している。
これまでの受注額は、18年度には100万円に満たなかったものが、19年度には500万円を上回り、20年度には1,000万円を超えるなど着実な成長を遂げている。
仕事を行う「場」「インフラ」とともに、そこで働く人への「教育」、そして安定的な仕事を得るための「営業」が揃った一般法人と同様の機能を揃えた結果と言える。
都市部の企業・人材の誘致も目指す
さらに、昨年度から蓼科地区の宿泊施設などとタイアップして、ワーケーションを希望する企業やそこで働く人材の誘致活動を本格化している。
テレワークが行われている「ふるさと交流館」には、移住定住サポートセンターが併設されており、移住定住はここが中心となって行っている。
誘致した人材の受け皿とし必要となる「住居」についての手当ても平行して行われている。
同町には現在、空き家とされている住宅260軒余がある。
これらの空き家に対し利用できるものかどうか調査を行い、条件が整えば、町が補助金を出し水回りなどのリフォームを行って移住者が住める「住居」としていく。
移住に必要な住居が不足するため、そのチャンスを逃す自治体は多い。
移住定住施策とセットで住居を整備することは成功確率を高めるのに欠かせない。
テレワークを活用した地域の働く場の創出を
テレワークは以前から行われてきたが、新型コロナウィルスの感染拡大によりその利用は加速した。
立科町のように、テレワークを活用して地域の女性、高齢者、障がい者の雇用の場を作り、都会から企業や人材を呼び寄せることは今後の地方創生の一つの重要な手立てのように思う。
コロナで受けた被害は甚大だが、こうした「落とし子」はしっかりと育てていきたい。
(初出)SBCラジオ2021年5月14日放送「モーニングワイド・ラジオJ『Jのコラム』
参考)長野経済研究所「経済月報3月号」『わが町わが村を語る“立科町”、「経済月報5月号」『北から南から“立科町 テレワークを活用し、子育て中の女性や高齢者の就労を支援”』
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