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祝!藤井聡太さん、信州の地で7冠に<2023・06・09>

記録づくめの名人・七冠奪取

高山村の山田温泉「藤井荘」で行われた将棋の第81期名人戦七番勝負。6月1日、初挑戦の藤井聡太氏が渡辺明氏から名人位を奪取し、7冠タイトル保持者となった。

藤井氏は現在、20歳10カ月であり、1983年に谷川浩司氏が達成した21歳2カ月の最年少記録を40年ぶりに更新した。

さらに、羽生善治氏が96年2月に25歳4カ月で達成した7冠の最年少記録も更新した。今までに7冠達成した棋士は羽生善治氏しかおらず、史上2人目の偉業達成ともなった。

この歴史的快挙を実現したのが、藤井聡太氏と苗字が同じ高山村の「藤井荘」であることの意義は長野県にとって大きい。

経済効果について考えてみる

藤井氏活躍の経済効果について、日本将棋連盟が藤井氏のデビュー時に試算したものがある(参考:Abema TIMES)。

藤井氏は、2016年10月に14歳2カ月という史上最年少のプロ棋士としてデビューした。その際の対局相手が将棋界の大御所加藤一二三氏で、彼に勝利を収めた。それから負けなしの29連勝の新記録を打ち立てた。

この快挙を各メディアが大きく取り上げたことで将棋はブームとなり、2017年に「藤井フィーバー」という流行語まで飛び出した。

これらが報道された2日間のテレビ、新聞、WEBなどの時間を広告効果として、日本将棋連盟が独自に試算した結果が約185億円相当となった。

地域経済にとっては、対局時のおやつや昼食、夕食などの将棋めしが注目を浴び、さらに小学生向けの将棋教室や将棋大会も、参加者が前年に比べ4割程度の増加傾向になった。

長野県への経済効果はどうか

今回の偉業で「藤井フィーバー」が再来している。

これを伝える多くの報道は、長野県、高山村、山田温泉、藤井荘という言葉を連呼した。これらの地域の広告効果は、先の日本将棋連盟の試算を参考に考えると185億円相当とも考えられなくはない。

また、藤井氏の選んだおやつが須坂市の「コモリ餅店」の「一万石」。食べた翌日は瞬く間に完売となった。昼食は「ポーク勝カレー」、「信州そばと天ぷら膳」などであり、これらも大いに注目された。

広告による地域の知名度向上は、観光需要の増加を期待させる。現在、将棋人口は「レジャー白書2022」によると500万人。その人数に近年増加している「将棋はささないが観て楽しむ『観る将』と呼ばれる人」を併せると、将棋人口はさらに膨らむ。

それらの人々が長野県、高山村、山田温泉、藤井荘に「藤井ブランド」を感じ、旅行などで訪れ、宿泊し、将棋飯を食べ、おやつを食べることを考えると、経済効果は相応に大きいものになろう。

例えば、観光振興策に映画のロケ地などを巡る「聖地巡礼」というものがある。

藤井聡太氏は7つのタイトルを保持しているが、これらのタイトル戦を戦った15の地域と連携しての「将棋聖地巡礼」といった観光商品化などが考えられる。

当然に高山村独自としても、藤井聡太7冠達成の「聖地」として、地域の素晴らしさと併せ、全国の将棋ファンを始め、多くの人々にアピールを続け、人を呼び込むこともできる。

藤井聡太氏に再び、三度来ていただくよう誘致努力の継続なども望みたい。

今回つかんだチャンスをどのように生かしていくか。地域の構想力と行動力が試されている

藤井7冠の強さの秘訣

私に藤井7冠を語る資格は全くないが、谷川浩二氏の著書「藤井聡太論」(講談社α新書)からは3つの強さの秘訣が読み取れる。本文から引用させていただく(「 」内)。

1つは、運を呼び寄せる所作ふるまい。

「藤井さんの対局をテレビやインターネットでご覧になった方はご存じだろうが、彼は対局者に対する一礼が深く長い」、「藤井さんはまだ十八歳だが(2021年当時)、今後ほとんどの棋士に対して上座に座ることになる。先輩に対する敬意を一礼の深さ、長さに示しているのかもしれない。そして、実は羽生(善治)さんの一礼も深く長い。」「『将棋の神様』はそうした棋士の所作ふるまいをきっとご覧になっているに違いない」。

2つは、負けん気と平常心の両立。

「負けず嫌い、負けん気の強さは、将棋を長く続けていくうえでも絶対的に必要なものである」、「藤井さんの幼い頃の負けず嫌いは有名で、負けた瞬間に将棋盤を抱えて号泣するエピソードはもはや伝説化している」。

勝ち続けるためには負けん気を内に秘めながら平常心を保つことが必要だと、谷川氏は述べている。

3つが、記録ではなく強くなること。

「藤井さんは史上最年少のプロデビューの時から常に『新記録』と結び付けて報じられてきた。最多連勝記録、最年少昇段、最年少優勝など数え上げればきりがない。しかし、折に触れて藤井さんは『目標は記録よりも、とにかく強くなること』を表明している。例えば、『自分自身のことが一番大切なので、成績自体をあまり人と比較することは意味がないかなと思っています』というように」、「将棋を突き詰めていくこと、強くなることが使命・・・使命までいくかわからないですけど自分のすべきことだと思います」

「純粋に自分の実力を高めることを志している言動は、羽生(善治)さんの姿勢に通じるところがあるように感じる」と谷川氏は分析している。

何事によらず凡人は他人との比較に終始するが、一流と呼ばれる人たちは自分と闘い続ける。
どのようにその境地に達するのか。

日々自問自答してみるのだが、20歳の青年には遥かに及ばない。

  • (初出)SBCラジオJのコラム2023年6月9日放送

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