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環境の時代、水の恵みと歩む大桑村<2021・07・15>

大桑村 貴舟村長を訪ねて

木曽谷の南部に位置する大桑村は、中央アルプスや阿寺渓谷などの優れた自然資源に恵まれ、村を南北に貫流する木曽川には9つの水力発電所が設置されている。

電源地帯であることから戦時中には多くの工場が立地され、今でも製造業は大桑村の主要産業となっている。

これら村の強みを生かしながら、人口流出に策を講ずる貴舟豊村長に話をうかがった。

笑顔で村政を

貴舟村長とは県の会議などでご一緒することがあったが、いつも笑顔で話されるのが印象的だった。

実際に村政に対する思いをお聞きし、その理由が理解できた。

貴舟村長の村政に対するポリシーは、「笑顔で始まる住民との信頼関係の構築」だという。

「住民と笑顔で会話をし、寄り添う。そうすると住民の皆さんも行政に親しみを感じ、心を開いてくれるのではないでしょうか。私宛に直接手紙をくださる方もいるのですが、そんな時は直筆で返事を書きます。そういう積み重ねが住民との信頼関係につながると私は信じています」

D・カーネギーのベストセラー「人を動かす」では、人に好かれる6原則の一つに「笑顔を忘れない」をあげている。「笑顔を見せる人は、見せない人よりも、経営、販売、教育などの面で効果を上げるように思う・・・」

経営者でも笑顔の方の企業は、おしなべて業績が良い。

その逆ではない。

貴舟村長はその人なつこい笑顔で、現在4期目を務めている。

雇用の場があるという魅力

大桑村は多くの山村同様、森林に覆われている。

森林の占有面積は95.8%と圧倒的だ。

ただ例外的なのは、製造業が主要産業という点である。

大正時代に電力王の異名を取る福澤桃介が、木曽川の豊富な水量に着目し大桑発電所を建設し、今では9カ所の発電施設が立ち並ぶ。

戦前や戦中は電源地域には、製糸業から疎開企業まで製造業が集積をなした。

今でも株式会社IHIターボなどいくつかの自動車関連企業が村内で事業を継続しており、雇用の場が確保されている。

そして、発電施設所在地ならではの交付金も村の大きな財源となっている。

そのため、村民が安定した生活が送れるというのが村の大きな魅力となっている。

魅力を子どもたちに伝えること

この強みを人口減少対策に生かさない手はない。

貴舟村長は児童会や生徒会に招かれると必ず「大桑は良いところだよ」と話されるという。

また、企業や学校と連携して、社会勉強を兼ねた子どもたちの職場訪問も実施している。

大人になってから生まれ育った村で働こうと思ってもらうためには、村は良いところで、働く場があることを知ってもらう必要がある。

子どもにとって実際に働く現場を見て、体験する事は、大人になってからも忘れない記憶として残る。

地域の産業振興の基本は、その地の子どもたちに対する地場産業の教育である。

現在、県内の多くの自治体で故郷(ふるさと)の魅力を教える「郷育」が施されているが、こうした基本に立ち返ってのことだろう。

村で育った子どもたちが、しっかりと戻ってきてこその地方創生である。

これからは水資源を観光産業に

大桑村では、今まで豊富な水資源を発電という形で村の発展に利用してきた。

9カ所の水力発電所は村の誇りである。

一方、阿寺渓谷という水の芸術とも言える観光資源も、日本遺産に指定されるなど村の誇りであり宝だ。

ところが大桑村に産業としての観光はあまりない。

水力発電所を起点に集積した製造業が村民の生活を支えてきたため、観光業を生業にする必要がなかったためだ。

阿寺渓谷はそこにあるだけで価値あるものだが、「観光業」としての取り組みが殆んどなされていないのはなんとも勿体ない。

生態系を維持するためには生物の多様性が必要だが、地域においても産業の多様性は重要だ。

地域として、製造業ばかりではなく、買い物を楽しむ店舗や自然を楽しむ観光業などがバランスよくあることは、人が住まう場としての魅力を向上させる。

これらが多様な雇用を生み出し、若者のUターンを図る上での大きな受け皿ともなる。

「村に若者の雇用の場をより多く作るためにも、観光業を産業化していくべきと考えています」

貴舟村長はいつもの笑顔で今後の抱負を語ってくれた。

  • (資料)長野経済研究所「経済月報7月号」「わが町わが村を語る 大桑村」

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