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伝統製法がつくるホンモノの味とファン~有限会社オブセ牛乳<2023・08・26>

地元で愛され続ける乳業メーカー

有限会社オブセ牛乳(上高井郡小布施町)は、おいしくて安全な牛乳として、小布施町内の全ての小中学校の給食で使われるなど、地元で愛され続けている乳業メーカーだ。学校の給食時にうかがうと、オブセ牛乳に顔をほころばせる子供たちに多く出会える。

その味わいは、さらりとしているが、コクと甘みをしっかりと感じることができ、多くのファンをつくり続けている。

濃く深い味わいのポイント

同社は、上高井郡高山村の牧場など、近隣の酪農家を中心に生乳を仕入れている。タンクローリーで工場に運ばれた生乳は、バルククーラーと呼ばれる貯蔵庫に移され、一定温度に冷やされる。次に、クラリファイヤーという遠心分離機にかけられ、ほこりや塵が取り除かれる。きれいになった牛乳はホモゲナイザーという機械で成分が均質化される。

ここまでは一般の乳業メーカーとほとんど変わらない工程だが、ここからがオブセ牛乳の「濃く深い味わい」が生み出されるポイントである。

乳業メーカーの多くは、120度から130度の温度で2から3秒の超高温殺菌を行っているのに対し、同社は、80度の温度で15分間の高温保持殺菌を行っている。多くの乳業メーカーに比べ、非常に時間がかかり効率が悪い製法を採っている。この理由は創業時に遡る。

同社の創業は1950年で、河合秀夫という地元の個人が河合牛乳店という名前で始めた。その際に河合氏が、牛乳を最もおいしく飲める製法を求め試行錯誤を繰り返した結果、「80度で15分の殺菌」という製法にたどり着いた。

これが「濃く深い味わい」が生み出されるポイントとなっている。以来70年以上にわたり、創業者の見だしたこの製法を堅持してきた。

ニッチ市場「濃く深い味わい」で生き残る

「濃く深い味わいの牛乳市場」は、生産に手間がかかるため、大手が手掛けない隙間(ニッチ市場)となっている。このニッチ市場に特化してきたことが、同社が生き残ってこられたポイントとも言えるだろう。

中小企業は、大手が手掛けない市場を見つけて生き残るしかない。そうでなければ、たちまちに大手にやられてしまう。

実際に超高温殺菌での製法は、時間が2から3秒と極めて効率的であり、多くの大手企業が採用している。ここに中小企業が「われもわれもと」参入した結果、価格競争で太刀打ちできずに市場から撤退していった。

効率が悪い製法だからこそ優れている、という製品は世の中に多い。だからこそ、そうした市場で体を張って続けていくということが、中小企業が栄えるための流儀ではないだろうか。

新たな事業展開・チャレンジ

ニッチ市場で生きていくためには、多様な製品、チャネルを持たなくてはならない。1つ1つが小さな市場であるため、総合力で売り上げを立てていく必要がある。

同社の場合は、二つ目の柱が牛乳を使った加工製品だ。オブセ牛乳のおいしさを引き出すドーナッツやゴーフレットなどのお菓子を、株式会社マルイチ産商プロデュースの下で製造販売している。また、株式会社wiiipと立ち上げた「MILK ROUTE」という共同プロジェクトでは、ミルクチョコレートなどオブセ牛乳を使用した新製品の開発を手掛けている。最近では、千曲市の手作りヨーグルト専門店「バスチアンヨーグルト」とのコラボ商品として、フルーツと合う酸味を抑えた手作りヨーグルトも開発している。

三つ目の柱がオブセ牛乳のゴロをあしらったグッズである。トートバッグやマグカップ、グラス、ピンバッジなど「オブセ牛乳ワールド」が展開されている。ロゴは創業者河合秀夫さんの妻登美子さんが考案したもので、カタカナのオブセという社名に月と天使がデザインされている。近年のレトロブームと相まって、人気が高まっている。もっともグッズの場合には、直接の利益よりもファンの愛着心や一般消費者の認知度を高めることを目的にしている。

ホンモノを求めて

「濃く深い味わい」を作り出す高温保持殺菌は、消費期限が短いため県外での販売はほとんどない。

しかし、それゆえにオブセ牛乳を知った県外のファンが、小布施町まで足を運んでくれることもある。そこでしか消費することができないホンモノの味が、観光振興につながっている好事例と言えるだろう。

子供の頃、近所の酪農家から絞ったばかりの牛乳をよくもらった。コクのある甘い味がした。牛乳とは本来そういう味のモノなのだと思う。

オブセ牛乳がホンモノの味を作り続けることで、ファンの層が広がり、地域がさらに元気になることを期待したい。

  • (資料)SBC「明日を造れ!ものづくりナガノ」(2023年8月26日放送)

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