専門高校ものづくり教育に対し協力企業が感じるメリットとは・・・
経済産業省の関東経済産業局では、現在、専門高校の実践的なものづくり教育を応援するために、地域の企業と教育機関、行政等の連携により、生徒の企業実習や企業技術者の出前授業などを支援する「工業高校等実践教育導入事業」という委託事業を展開しています。
当研究所では事業実施機関としてこの取り組みをお手伝いして2年目になりました。
長野県内では、長野工業高校、駒ヶ根工業高校、木曽山林高校(木曽青峰高校)、池田工業高校、武蔵工業大学第二高校の5校のモデル校で、各校がそれぞれ昨年以上に意欲的に取り組んでいます。
しかし、この取り組みは、生徒の受入や社員の高校への派遣など、企業や商工団体、行政機関のご協力によって初めて実施できるものです。
そこで、中小企業庁、関東経済産業局および長野経済研究所では、なるべく多くの企業の皆さんに専門高校のものづくり教育にご協力いただきたいと考え、昨年度ご協力いただいた企業や団体の皆さんに、取り組みに対するご意見などをお聞きするアンケートを実施しました。
企業にとっての負担は少々ありますが、メリットも大きいことことから、今後、より多くの地域企業の皆さんにぜひご協力いただきたいと思います。
企業の負担は「実習教材の確保、提供」や「実習指導者の確保」
まず、この取り組みへの参加により負担を感じた点を聞いたところ、「実習材料の確保、提供」が負担になった企業が33%に上り、最も多い回答でした。
第2位は、「実習指導者の確保」で28%、第3位が「実習プログラムの作成」で25%でした。
協力企業は材料、人材、教材に負担を感じていることといえます。
企業にとってのメリットは「専門高校との間で関係が築けた」こと
一方、この取り組みへの参加により感じたメリットを聞いたところ、半数を超える53%の企業が「専門高校との間で関係が築けた」と回答し、他の回答を大きく引き離して第1位でした。
第2位は、「自社のイメージ向上につながった」が28%、第3位は「社員の教育になった」と「社員の士気の向上など職場が活性化した」がともに23%となり、高校生への指導によって、自身の業務を整理し直せるなど、相乗効果を生み出している実情が明らかになっています。
定期的な新卒者確保などのため、職場体験や工場実習への積極的な協力など新たな形で高校とのつながりを見出せたことが地域企業のメリットといえると思います。
今後も「ものづくり人材育成への協力を希望する」企業がほとんど
この取り組みは、3か年計画ですので、来年度で国の支援が終了する予定です。しかし、国の助成がなくても、企業と学校それに地域の団体が協力して次世代のものづくりを支える人材を育成することは必要だと考えます。
そこで、この事業が終了した後も生徒の企業実習などの受入にご協力いただけるかを聞いたところ、何らかの形で「協力したい」と回答のあった企業が9割を超え、ほとんどの企業が地域のものづくり人材育成に協力する意向を示しています。一方、「協力できない」との回答はゼロでした。
今回のアンケートからは、「専門高校は地域の『宝』」、「地域の人材は地域で育てる」と感じている企業が大変多いことがわかり、お手伝いしている長野経済研究所としても喜ばしい限りです。
地域ネットワーク連携により、生徒・教員それぞれによる企業実習、企業からの技術者派遣、地域商工団体との連携協力、生徒が実際の現場を体験できる実践的学習を取り入れられるよう、今後も長野経済研究所では長野県教育委員会とともに地域企業と学校の連携を支援していきます。
(2008.10.21)
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