長野県企業の人手不足の現状と人材定着策を考える<2024・03・04>
長野県の人手不足の現状と見通し
長野県経済は、観光関連サービス業や小売業で客数が増加するなど、経済情勢は持ち直し基調にあることがわかる。しかし一方で、人手不足がそれにブレーキを掛けていることも鮮明となってきた。
ここ何年も人手不足問題は取りざたされてきたが、いよいよ影響が顕在化してきたようだ。
人口減少社会となっている日本では、当然に労働力人口も減る。長野経済研究所で2040年までの労働需給を予測したところ、40年には17万6,000人が不足する見通しとなった。また、昨年の7月に行った県内企業向けアンケート(4,064社に送付、466社より回答)では、「適正」28%に対し、「不足」は65%と深刻な状況となっている。
人手不足の原因とその対策
まず不足と回答した企業にその原因を尋ねた。
「採用人数が確保できない」が最多で、「受注増加」などのほか「離職者の増加」と続いた。
労働人口が減っている訳だから「採用人数が確保できない」状況はさらに深刻化していくだろう。それに併せ「離職者の増加」は問題だ。
採用を増やすために成果があった取り組みについて、社員が「適正」と回答した企業に尋ねた。結果は「自社社員からの紹介(リファラル採用)」が最も多く、「就職説明会への参加」「人材紹介サービスの活用」「ハローワークへの登録」「インターンシップの実施」と続いた。
ハローワークや人材紹介サービスの活用は勿論重要だが、自社の社員からの紹介など直接的な方法でも効果が高い。企業にヒアリングをすると、地元高校など学校と良い関係を築いている企業の採用は良好だ。
人材の定着を考える~求められる働きやすさと働きがい
離職を減らすため、社員が「定着」するために実施した取り組みで効果がみられたものを尋ねた。
最も多くの回答は「給与水準の引上げ」だが、その他は「働きやすさ」「働きがい」を高めるものとなった。
具体的には、「働きやすい職場環境づくり」としては、「フレックス制度」「テレワークの導入」「育児休暇制度」等柔軟な働き方ができる事。「休息所、食堂などの整備」「社会交流イベント」等社員を思いやる取り組みが用意されている事。「メンター制度」等新入社員が孤立しない仕組みがある事。これらが定着のために効果があることがわかった。
「働きがいが高まる取り組み」では、「提案制度」など社員の意見を反映させる取り組み、「公正な人事制度」「表彰制度」など社員の頑張りを評価し褒める仕組み、「研修等の人材育成制度の充実」など社員の成長を手助けする制度などだ。
特にこの人材育成制度では「社内公募制度」や「ジョブローテーション」などが、社員のやる気を出し、離職防止などの成果につながっている。
つまり、適材適所とよく言われるが、「社内公募制度」などを導入したり「ジョブローテーション」により、やりたい仕事をやってもらうという仕組みが社員のやりがいを高める成果があるようだ。
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これら一連の制度は一通り導入し、実施しているが、それでも人手不足は解消しないと訴える企業の声もよく聞く所でもある。
しかし、いずれにしても給与水準で大手に劣る中小企業の場合には「働きやすさ」や「働きがい」で戦っていくしかない。
今一度各社のそれを見直してみる時期にあるように思う。
(資料)中村亮介『長野県内企業の人材確保に向けた取り組みを探る』「経済月報」(2023年10月)
(初出)SBCラジオ Jのコラム 2024.2.26放送
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