旺盛な観光需要が投資の増加に直結するとは限らない
為替円安を追い風としたインバウンド需要の増加は、宿泊業に新たな成長機会をもたらしている。一方、建築費や設備価格の上昇に加え、過去の増改築や債務、金利の上昇が新たな投資を難しくしている。特に小規模事業者では、債務や利払いの負担が相対的に重く、設備投資も既存設備の減耗を補う水準にとどまる。需要が増えれば投資が進み、地域の供給力が自然に高まるという関係は、必ずしも成立しない。
(図表)宿泊業企業規模別のネット債務とCFの状況(2026年1-3月期)

地域の供給力を踏まえた観光地経営
観光地の供給力は、宿泊施設の客室数だけで決まるものではない。人材、住宅、交通、道路、水道、除雪能力など、地域の資源には限りがある。このため、地域の観光施策においては、観光客数の増加だけを目指すのではなく、地域がどの程度の需要を、どの時期に、どのような形で受け入れられるかを見極める必要がある。季節的な需要を平準化し、既存施設や人材の稼働率を高めながら、観光による便益と地域住民が負担する費用の均衡を図る視点も重要である。
こうした中、近年は地方でも大手資本による投資が目立つようになってきた。こうした動きは、地域にブランド力、誘客力、経営ノウハウなどをもたらすことが期待される。他方で、地域観光の付加価値やインフラは、地域事業者が築いてきた文化、景観、食、事業基盤によって支えられてきた面もある。地域事情を把握する地域金融機関には、既存事業者の経営転換を支援するとともに、地場事業者と域外資本の利害を調整する役割が求められるだろう。これからの時代は、地域内での取引増加や所得拡大に加えて、地域の事業者の未来への投資につなげるためにも、観光地全体の価値を高める「観光地経営」の視点が重要ではないか(詳細は関連ファイル内のレポートをご覧ください)。