長野県経済・産業

日本経済:円安功罪論争に対する地域の視点

円安の影響は便益と負担の配分から捉える必要

  円安が日本経済にとって望ましいかどうかは、輸出企業と輸入企業、大企業と中小企業、資産を保有する家計と国内賃金に依存する家計など、それぞれの立場によって評価が異なる。このため、円安の功罪を一律に論じるのではなく、その便益と負担が国民経済の中でどのように配分されるかに着目する必要がある。特に輸入インフレが強まる局面では、食料品やエネルギー価格の上昇が家計の実質購買力を低下させる一方、価格転嫁力の弱い中小企業や内需型企業の収益を圧迫し、企業間や家計間の格差を拡大させる可能性がある。

直接的な物価波及を上回る円安の影響

  円安による物価への影響を、輸入価格から消費者物価への直接的な波及だけで評価することには限界がある。持続的な円安は予想物価上昇率を押し上げ、企業による価格改定の前倒しや、家計・取引先における値上げ受容姿勢の変化を通じて、物価への波及を強める可能性がある。景気ウォッチャー調査のコメントを分析すると、円安が進む局面では否定的な評価が増加し、為替水準が切り上がった後も否定的な言及が残る傾向がみられる。円安の経済的影響は、為替の変化率だけでなく、その水準と持続期間、さらに企業や家計の景況感や予想形成への影響を含めて捉える必要がある。

 地域間格差を抑えるマクロ安定化政策

  県内総生産デフレーターを県庁所在地の消費者物価指数で除した「地域の疑似交易条件」(図表)をみると、2022年度以降、都道府県間のばらつきが急速に拡大している。これは、生活価格が全国的に上昇する一方、地域で生み出される付加価値の価格は、産業構造や企業の価格転嫁力によって異なる動きを示したことを示唆する。政府は潜在成長率の引上げや輸入依存度の低下など、中長期的に日本経済のファンダメンタルズを強化する政策を進めると同時に、過度な円安が家計、企業、地域の格差を増幅させないよう、足元の物価と経済の安定にも配慮する必要がある。将来の成長力を高める政策と現在の経済を安定させる政策を両立させることが、国民経済の健全な発展につながる(詳細は関連ファイル内のレポートをご覧ください)。

(図表)地域の疑似交易条件
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