国内版デジタル赤字の地方経済へのリスク
人手不足が深刻化するなか、企業にとって業務システム、クラウド、AI、予約管理、人事労務システムなどへの投資は避けられない経営課題となっている。とりわけ人口減少が進む地方では、労働供給の制約が都市部以上に強まりやすく、ソフトウェア投資への依存度は今後一段と高まる可能性がある。しかし、ソフトウェアサービスの供給力が東京など大都市圏に集中している場合、地方企業のDX投資は地域内で循環せず、都市部企業の売上や所得として吸収されやすい。本稿では、こうした地域間の資金流出構造を、国際収支上のデジタル赤字になぞらえて「国内版デジタル赤字」と位置付ける。
人材流出の先にある資金流出
国内版デジタル赤字の問題は、単に地方企業が東京所在のIT企業に支払うという取引構造にとどまらない。地方では若者の都市部流出や自然減により労働供給が細り、人を雇えない企業が省力化投資によって業務を維持しようとする。その結果、本来であれば地域内の雇用所得として循環したはずの資金が、ソフトウェア利用料や外注費として地域外へ流出する可能性がある。つまり地方経済は、人材流出によって労働力を失った後、省力化投資を通じて資金まで域外へ流出させるという、二段階の漏出に直面しかねない(図表)。
(図表)国内版デジタル赤字と地域経済循環
問われるのはDXによる付加価値創出
もっとも、DX投資そのものを否定すべきではない。労働供給の先細りが避けられないなか、地域企業にとってデジタル化は不可欠である。重要なのは、それを単なるコスト削減や人員削減で終わらせるのではなく、客単価の引き上げ、品質向上、納期短縮、価格交渉力の強化など、付加価値向上の手段に転換できるかである。国内版デジタル赤字の本質は、デジタル化で生まれた果実をどの地域が受け取るのかという分配の問題であり、地方企業が東京に支払った投資額と同等、ないしそれ以上の付加価値を自ら生み出せるかが問われている(詳細は関連ファイル内のレポートをご覧ください)。