CFRPで拓く高性能パイプの新領域

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最終更新日: 2025年9月10日

 (株)信濃工業は、産業用カーボンパイプのほか、ゴルフ用のカーボンシャフトの製造・販売等を行う製造業者です。1972年の設立当初は、主にカーボン製の釣り竿を製造していましたが、その後はゴルフ用シャフトや産業用パイプの製造などへと着実に事業を展開してきました。2015年には、(一財)素形材センターが主催する素形材連携経営賞において経済産業省製造産業局長賞を受賞するなど、技術力にも定評があります。

軽量かつ特性に応じたアレンジメントが可能

 イチ押しは、CFRPCarbon Fiber Reinforced Plastics)パイプと呼ばれる、炭素繊維を強化材に使用した産業用のプラスチック複合材パイプです。産業用パイプは、生産用機械や航空・宇宙などさまざまな用途に用いられ、CFRP製のものは鉄製に比べ5分の1と軽量であるほか、炭素繊維と樹脂を組み合わせることにより、強度・剛性等の面で多様な特性のパイプを作り出すことができます。

 CFRPパイプの量産化に早くから成功していた同社は、大手メーカーとの取引も多数あり、新聞の印刷機に設置される輪転機用ローラーの国内シェアはほぼ100%を誇ります。また近年は、フィルム製造用カーボンロールの受注も堅調です。海外向けでは、生産効率が高い大型ロールの需要が高まっていることから、20年に世界最大級のCFRPパイプ製造拠点である第5工場を増築するなど生産設備の増強を図っています

    

 (図)使用用途が多彩なCFRPパイプ

自社開発の製造装置で顧客のニーズに応える

 使用用途の幅が広い産業用パイプでは、小ロットから大ロットまでさまざまな受注がありますが、同社は自社で製造装置を開発・製造しているため、取引先の要望に柔軟に対応できます。その象徴的な事例が、(一社)先端材料技術協会の製品・技術賞を受賞した陸前高田市(岩手県)の「奇跡の一本松」保存プロジェクトへの参画です。
 東日本大震災の津波被害を受けながら唯一生き残った「奇跡の一本松」をモニュメントとして残すため、一本松の構造体に使うCFRPロールの製造に当たり、同社に白羽の矢が立ちました。当初は、製造難易度が非常に高いことが見込まれていたため受注には迷いもありましたが、「うちにしかできない」と考え、地元の期待に応えました。

 (図)陸前高田市の「奇跡の一本松」のモニュメント構造体として採用された同社のCFRPロール 

産業の高度化を支えたい

 産業用パイプは、現在も金属製のシェアが圧倒的に高く、CFRP製は5%にも満たないです。性能では金属製よりも多くの面で優れるものの、コスト面で劣後することがその要因です。もっとも、金属製パイプをCFRPパイプに置き換えることで、機械の耐久性向上や効率性などが飛躍的に改善することから、中長期的にはコストを上回る効果が期待できます。青木賢社長は、航空・宇宙など将来の成長分野への挑戦に意欲をみせつつ、「CFRPパイプを通じて、取引先の生産性向上と製造業の高度化の一助になりたい」と語ってくれました

 (図)製造設備は、蓄積したノウハウを基に全て自社で開発・製作しており、同社の競争力の源です  

株式会社信濃工業

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