夏秋いちご「恋姫」の栽培を通じて、農業振興と地域活性化に貢献

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最終更新日: 2025年9月10日

 (株)苗香屋(のうかや)は、2022年に伊那バス(株)がアグリ事業部を分社化し、100%出資の子会社として設立した企業です。

 伊那バス(株)が、19年に創業100周年を迎えるに当たり、地域への恩返しとなるような取り組みを社内で募集したところ、地元信州大学農学部が開発したいちごの品種「信大BS8-9」を広く知ってもらうという提案がありました。これを機にいちご栽培を事業化し現在に至っています。

高い糖度と美しい果肉、豊かな香りのいちご

 イチ押しは、信大BS8-9による夏秋いちごの「恋姫」です。この「恋姫」は商標登録されていて、伊那にある4軒の生産者だけが使えるオリジナルブランドです。夏期の高温下でも高い糖度を維持し、甘みと香りが際立つ味わいが特徴です。

 また、外観が美しく、カットしても果肉まで赤いので、ケーキやパフェなどのスイーツに特に適しています。栽培については、夏場は開花から25日程度で収穫していますが、気温が下がる11月から年末にかけては、その期間が45日程度かかります。これにより程よい酸味の上にさらに糖度が蓄えられ、いちご本来の甘みが増し、生食としても最高の味わいになります。

    

 従来の夏秋いちごの糖度は10~11度であるのに比べ、「恋姫」の糖度は平均13度程度あり、高い糖度と濃い味わいを実現

全国の有名店から注文が殺到

 従来の夏秋いちごは、一般的な冬いちごに比べて硬く甘みが弱いというイメージがありましたが、「恋姫」はそれを根底から覆すほど甘く、味も濃厚です。そのため首都圏の百貨店や関西を中心とした高級青果店、オーダーケーキ専門店などから注文が相次いでいます。

 冬いちごの出荷価格は、1kg当たり1,000円前後であるのに対し、「恋姫」は4,000円前後の高値で取り引きされていて、そのブランド価値は高く評価され、今年7月に開催された第1回全国夏いちご選手権では銀賞を受賞しています。

農業を通じて社会課題に立ち向かう

 同社は、「農業を通じて社会課題に立ち向かい、農業振興と地域活性化に貢献したい」という強い思いでいちごの栽培に取り組んできました。

 現在15棟ある広大なハウスの敷地は、もともと所有者の高齢化により耕作放棄地になっていた土地で、同社がいちごの生育に適した圃場につくり変えるところから始め、再び収穫できる土地に再生させました。

 また、品質改善に向けて試行錯誤を続けた結果、現在は約6千株の「恋姫」が栽培され、収穫量は当初の1.5倍の年間約6トンまでになりました。これもまた、同社が掲げる地域貢献への取り組みにつながっています。

「信大BS8-9は、全国でさまざまなネーミングで栽培されているが、さらに多くの生産事業者にこの品種の魅力を知ってほしい。そして、地域をもっと知り元気な伊那市づくりに貢献するために、夏秋いちご『恋姫』を地域のブランド商品として育てていきたい」と、青木一徳取締役は熱い思いを語ってくれました。

  

圃場がある伊那市西箕輪は、いちご栽培に最適な気候が整っています

株式会社苗香屋

 

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