農業革命のパイオニアが挑む農業機械の電動化

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最終更新日: 2025年7月10日

 カンリウ工業(株)は、1925年に大阪府で創業した農業機械製造業者で、今年4月に創業100周年を迎えました。太平洋戦争を機に松本市へ疎開し、61年に現在地へ移転。65年に開発した人力田植え機・育苗機は、日本の農業史に残る技術革新として知られ、これによる農業の飛躍的な生産性向上は食糧の増産および労働供給面で日本の高度経済成長を支えました。そして、「省力農業を推進する」というスローガンを基に、穀物乾燥機や脱穀機といった機械を次々と開発し、農業の省力化に寄与してきました。現在の主力製品は小型精米機と肥料散布機で、いずれも国内屈指のシェアを誇ります。 

 (図)同社の人力式田植え機は日本の高度経済成長を農業面から支えました

電動化によるメリットを最大化

 イチ押しは、電動型自走小型肥料散布機です。同社がもともと得意とする自走小型肥料散布機は、狭小地など大型機械の利用が難しい農地で活躍してきました。こうした中、乗用車市場で進む電動化の流れを受けて、農業機械分野でもいずれその潮流が押し寄せると見込み、創業100周年を機に国内で初めて電動型の自走小型肥料散布機を開発しました

 電動化による最大の利点は、排気ガスを排出しないことです。環境面への配慮だけでなく、従来、肥料散布機の導入が難しかったような密閉されたハウス等でも安全に作業ができます。また、モーターのため静音性に優れており、住宅地に隣接する農地や早朝の作業でも運用が可能となります。さらに、エンジンによる振動がないため、操作者の疲労感も大幅に軽減できます。

メンテナンスの簡素化と高い安全性を両立

 電動化は、メンテナンスの簡素化にもつながりました。ガソリンの給油やオイル交換といった定期的な整備が不要となり、日常の管理が格段に楽になります。バッテリーは、1回の充電で約1時間の連続使用が可能であるため、肥料散布機としては十分な駆動時間を確保しています。

 さらに、高齢の方でも簡単に操作できるように、シンプルかつ見やすさを重視した設計になっているほか、速度スロットルと減速レバーを連結させた独自機構により、機械の不意な飛び出しも防げます。

変革期にある農業を支え続ける

 近年、令和のコメ騒動に象徴されるように、農業を取り巻く環境は大きく変化しています。担い手不足や価格変動などの課題が山積する中、同社ではこのところの精米需要の急増にも対応しており、精米機の受注が伸びています。これらの製品もまた、省力化と高効率化を両立させた設計が評価されており、ニーズに寄り添う同社の姿勢が随所に表れています。

 「農業は今、大きな変革期を迎えています。当社の強みであるフットワークの軽さとスピード感のある開発力を生かし、これからも日本の農業に寄り添う会社でありたい」と、藤森俊介社長は語ってくれました

  

 (左)日本初の電動式小型肥料散布機はシンプルで使いやすいデザインが特長
 (右)受注が急増する業務用精米機も国内屈指のシェアを誇る

 カンリウ工業株式会社

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