優れた「生砂によるステンレス鋳造技術」で高品質の鋳物を製造

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最終更新日: 2025年1月10日

 岡谷市長地に本社を置く越川工業(株)は、1955年に銅の精錬で創業しました。67年にはステンレス鋳物の製造を始め、「高品質製品の追求と提供」という方針の下、職人の高い技術力を駆使して優れた鋳物を提供しています。

熟練の職人が支える生砂型鋳造

 同社のイチ押しは、生砂によるステンレス鋳造技術です。同社は、砂で作った鋳型に溶かしたステンレスを流し込むことで鋳物を製造する「砂型鋳造」を行っています。
 砂型鋳造は、「生砂型」や「自硬性」などの方法があり、同社は「生砂型」を得意としています。多くの鋳造企業が採用する自硬性鋳造は、砂に樹脂と硬化薬剤を混合した上で常温で放置し、砂を硬化させて鋳型を作るのに対し、生砂鋳造は粘結材や水などを混ぜ、砂を押し固めて鋳型を作るため、自硬性鋳造より低コストで大量生産できる一方、型崩れが起きやすいという短所があります。そのため、生砂には細心の管理が求められ、季節や天候、気温を考慮して水分量と砂の配合を都度調節しなければなりません。この調節には職人の研ぎ澄まされた感覚と経験が必要であり、熟練の職人を多数抱えている同社は、非常に精度の高い生砂を作ることができます。

              

 (左)同社が製造する生砂。適切な砂の粒度を選定した上で粘結材などに水を加えたものを混ぜ、最適な砂の状態にしていきます(右)溶かしたステンレスを鋳型に流し込む溶解作業の様子。ステンレスは1,700℃にも達し、この熱に耐えられる生砂を作らなければなりません

機械加工でも高い技術力を駆使

 また、同社は、鋳物に工作機械で加工を施す機械加工でも高い技術力を保持しています。鋳物は、冷却時の収縮などの影響によって寸法誤差が生じやすく加工が難しいが、熟練の職人が蓄積してきた知見・ノウハウを生かして精密な切削加工を行っています。優れた技術力とサビにくいステンレスの特性を組み合わせた鋳物は高い評価を受けており、化学メーカーや食品メーカーなどの工場のバルブやポンプに使用されています。また、厳しい品質検査を通過することにより、日本海事協会などから船舶に使用できる部品の認証を受けており、液化天然ガス(LNG)運搬時の極低温冷却に耐える低温バルブにも使用されています。  

社内プロジェクトで技術力とモチベーション向上

 同社は、「エスキャスワン」という社内プロジェクトを数年前に立ち上げました。これは、社員が自社オリジナル製品を企画開発し、1年に1度社員同士でプレゼンテーションを行う取り組みです。そこで高い評価を得た製品は工業展に出展されるほか、商品化され実際に販売されます。社員の技術力向上を図るとともに、モチベーションの向上にもつながっています。2024年の諏訪圏工業メッセでは、プロジェクトの中で企画開発されたゴルフ用オリジナルパターを展示し好評を得ました。
 「当社は、技術力が高く仕事への意欲が高い社員が非常に多い。今後も質の高い製品を提供するとともに、社員の幸福度向上も追求していきたい」と越川浩道社長は語ってくれました。
                                     

                

社内プロジェクト「エスキャスワン」によって産み出されたオリジナルパター。社員が試行錯誤を繰り返すことで、砂型鋳造ならではの質感のある製品に仕上がりました

 

越川工業株式会社

 

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